NVIDIAの自動運転技術はなにがスゴいのか
巷で話題沸騰のNIVIDIAの自動運転技術のスゴさを徹底解剖。
数年前までNVIDIA(エヌビディア)といえばAMD Radeonと対抗するGeForceブランドのグラボメーカーという印象だったが、いまや車載用高性能プロセッサのマーケットリーダーに躍り出た。
車載プロセッサはルネサスやフリースケール(freescale)など老舗半導体メーカーの独壇場だったが、新興組のNVIDIAは高性能GPUとディープラーニング技術を組み合せた自動運転技術でシェアを急拡大している。
自動運転時代のゲームチェンジャー「NVIDIA」の強みを解説しやっす。
目次
自動運転のデファクト・スタンダード
パソコンに「インテル、入ってる」よろしく自動運転車は「NVIDIA、入ってるビア」という有様。
ともかく圧倒的な採用実績を誇る。
Volvo
NVIDIAが2016年1月のCESでDRIVE PX2プラットフォームを発表した際、いち早く採用メーカーとして紹介したのがスウェーデンのVolvo(ボルボ)。
Volvoの自動運転車開発プロジェクト「The Drive Me Project」でNVIDIA DRIVE PX2が採用されている。
中国 吉利汽車に買収されたスウェーデンのVolvo(ボルボ)はもともと自動ブレーキなどADAS技術に積極なメーカー。雪深い北欧では自動車の安全性能に潜在的なニーズが高いのかも。知らんけど。
Audi
2017年1月のCESではNVIDIAのデモカーBB8と交代でAudiの自動運転車のデモ走行も展示された。
AudiとNVIDIAは10年来の付き合いがあり、自動運転以外にもインフォテイメントシステムでも協力関係にある。
メルセデス・ベンツ
2017年1月、メルセデス・ベンツもNVIDIA採用した自動運転車を12ヶ月以内に発売すると発表した。
テスラ
テスラはNVIDIAのDRIVE PX2を世界で一番早く採用したメーカーだと思われる。
先にHardWare2(HW2)と呼ぶDRIVE PX2世代のハードウェアを搭載した車両を販売し、ソフトウェア・アップデートで自動運転機能を追加する斬新なシステム。
テスラは以前はイスラエスのモービルアイ(MBLY)と提携していたが、自動運転時の死亡事故を契機にNVIDIAに移行。変わり身の速さはスーパードライ。
BMWとホンダ
自動運転で正式発表はないが、BMW i8のディスプレイ制御にNVIDIAが採用されている。
ホンダも同様にNVIDIAを採用している。
つぎにNVIDIA採用した自動運転車に名乗りをあげるとしたら、この2社が有望だと思われる。
ZFとBosch
CES2017でドイツの自動車部品サプライヤ「ZF」もNVIDIA DRIVE PX2を採用した商用車(トラック)向け自動運転システム「ZF ProAI」を発表した。
CESではBoschも壇上に登場し、提携関係を強調した。
ROBORACE
ドキッ!自動運転車だらけのフォーミュラーカーレースこと「ROBORACE」では全車種にNVIDIA DRIVE PX2が搭載されている。
ROBORACEは2017年夏に開催予定のFIAフォーミュラE選手権を運営する英Formula Eが主催するほんまもんのフォーミュラーレース。
全車種がNVIDIA DRIVE PX2だとすると、ディープラーニング段階でどれだけ優秀なドライバーを確保できるかが鍵になるのかな?
いっそ、たまに暴走する中華製プロセッサを混ぜたほうが予想不可能なレース展開が期待できそうだが・・・
高精度地図(HDマップ)
自動運転に必要不可欠な地図も抜かりがない。
世界中の地図屋と連携して自動運転向けの高精度地図(HDマップ)の開発を進めている。
HERE と NVIDIA、「Cloud-to-Car」HD マップ作成用 AI テクノロジで提携 | NVIDIA
ドイツのヒア(HERE)も抑えている。
NVIDIA と TomTom、自動運転車向けマッピング・システムを共同で開発 | NVIDIA
オランダのTomTomとも提携
NVIDIA、 ゼンリンと日本向け HD マップ整備に対する AI の活用について共同研究することで合意 | NVIDIA
BaiduとNVIDIA、世界初の自動運転車向け「Map-to-Car」プラットフォームを共同開発へ | NVIDIA
中国だって手抜かりなく大手 百度(バイドゥ)を抑えている
One Architecture(脅威のスケーラビリティ)
NVIDIAのプロセッサはOne Architecture、つまりスーパーコンピュータもスマホ用プロセッサも同じアーキテクチャで設計されている。
スパコンでディープラーニングさせたアルゴリズムをシームレスにTegraプロセッサに移植させるという反則技ができたしまうのだ!
並列処理に強くスーパーコンピュータでも高いシェア
スーパーコンピュータの世界でも並列処理に優れたGPUをアクセラレータとして使用するケースが増えている。
NVIDIAはGPUによる並列処理技術「CUDA」と高い省エネ性能を武器に、スパコンの番付「Top500」や「Green500」で存在感を増している。
CPUの帝王インテルをしのぐ勢いだ。
スパコンで開発、スマホに移植
大量のカメラ映像を分析するディープラーニングは膨大な計算量が必要になる。
そこでディープラーニングで開発する段階はスパコン級の超高性能プロセッサを搭載した開発車両であらゆる環境を走りまくる。
そうして完成した自動運転プログラムをTegraプロセッサに移植する。こうすると普及用の安いプロセッサで自動運転が可能になるというわけ。
ディープラーニング+GPU=AIビッグバン!
ディープラーニングとGPUの組み合せで飛躍的な性能向上(ブレークスルー)が起こり、AIビッグバンが起きる。
人間を超える認識力
すでに写真だけなら、ディープラーニング技術で人間を超える認識力が実現できている。
ここでいう認識力とは画像から対象物を判断する能力のこと。
2012年、コンピュータによる画像認識精度のコンテスト「Imagenet」でnvidiaのGPUを使ったディープラーニングによるアルゴリズムが登場し、認識精度を一気に80%台まで上昇させた。
2012年以降、Imagenetの上位はすべてディープラーニングアルゴリズムに置き換わっている。
GPUで高速化
DNN(ディープ・ニューラル・ネットワーク)のトレーニングには時間がかかるが、並列処理に強いGPUはCPUより高速化しやすい。
3年で50倍高速化
NVIDIAはGPUの改良によりディープラーニングの性能を2013年から2015年で50倍高速化に成功した。
これはCPUでよく言われるムーアの法則を上回るペースで、NVIDIAによるとGPUは今後数年でさらに10倍程度の高速化できるとのこと。
既存技術との違い
これまでの画像認識技術と比較して、ディープラーニングが画期的な点をまとめた。
- これまでの画像認識
- 歩行者や道路標識など認識対象ごとに異なるアルゴリズムが必要
- 「あり/なし」の単純な判定しかできない
- ディープラーニングによる認識:
- 単一のDNNが「様々な対象物」とその「属性」まで認識
- 車に隠れた歩行者も認識できる
- 「属性」とは?
- 歩行者が「脇見をしている」という属性
- 「トラック」「パトカー」といった属性
GPUによるAIの高速化――新たなコンピューティング・モデルの誕生 | NVIDIA
ディープラーニングでのNVIDIA GPUの強みの解説記事
自動運転の世界で独走
エンド・ツー・エンド(end to end)のディープラーニングアルゴリズムを持っている。
エンド・ツー・エンドとはカメラの画像からステアリング操作の判断をすること。
熟練したドライバーの運転スキルをまさに目で見てワザを盗むシステムとなっている。
DRIVE PX2プラットフォーム
テスラやVolvoなどアーリーアダプタな自動車メーカーが採用している完全自動運転の第1世代がDRIVE PX2プラットフォーム。
テスラが世界初の完全自動運転を実現できる秘密はNVIDIAのディープラーニング技術にある - おばかさんよね
テスラの完全自動運転技術についてはこちらの記事にまとめた。
XAVIER世代で爆発的普及を狙う
次世代のXAVIER(エグゼビア)は性能・安全性・コストの三拍子がそろったガンダム的存在で爆発的普及が期待できる。
現在のParkerプロセッサ4個分と同等性能をXAVIERプロセッサ1個で実現できる。
性能そのまま(20 TOPS DL)で消費電力は4分の1(20W)になっている。
しかも機能安全規格の最高ランク ASIL Dに対応している。
XAVIERの製造プロセスはTSMC 16nm FinFET。
AI CO-PILOT
CO-PILOTとは副操縦士のこと。人工知能が運転をアシストしてくれる機能。
人間が運転しているときに適切なアドバイスできるだけでなく、法規制上、自動運転モードでもドライバーがいつでも運転できる状態あることを監視する機能にも使える。
顔認識(Face Recognition)
ディープラーニングによって人間を超える高精度な顔認識が可能。
ヘッドトラッキング(Head Tracking)
頭の向きを検出できる。
視線検知(Gaze Tracking)
目の画像からどこを見ているのか視線を検出できる。
読唇術(Lip Reading)
リップリーディング、いわゆる読唇術もできる。
唇の動きから話した内容を読み取ることができる。
PILOTNETの特徴
NVIDIAの自動運転向けディープ ニューラルネットワーク「PilotNet」が実現している技術の特徴をまとめた。
6カメラで全周囲認識
6カメラで360°全周囲を認識。
前方とサイドミラー・ルームミラーでしか目視できない人間よりもはるかに広い視野を持っている。人間を越えた(superhuman)安全技術。
Free Space認識
カメラの映像から人間や自動車を認識し、さらにフリースペース、つまり空間を認識することができる。
機能安全対応
XAVIER世代は機能安全規格 ISO26262に対応。チップはASIL C、ECUはASIL Dに対応。
DNNで開発したアルゴリズムは完全にブラックボックス(black box)のはずなので、なにか工夫をしていると予想。