おばかさんよね。

市場開拓戦略の落とし穴

公開日:  更新日: 2017/10/08

ヒット商品の実例からマーケティング手法を考えるケーススタディ。
今回のテーマは、刃先を曲げることで大ヒットしたはさみ「フィットカットカーブ」の続編。

スマッシュヒットの次の打ち手は?

想定以上のスマッシュヒットに喜びもつかの間、
次の打ち手を考えないと成長は続かない。
成長戦略を考えるときのド定番フレームワークが「アンゾフの成長マトリクス」

成長戦略の描き方

アンゾフの成長マトリクスを活用することで、
どんな打ち手があるのか、漏れなくダブりなく(MECEに)リストアップできる。
すべての打ち手をリストアップしたあとで「実現の難易度」と「効果」の2要素で期待値を求めて、
戦略の優先度を決める。

ケース「フィットカットカーブの成長戦略」

フィットカットカーブの例で考えてみるとこうなる。
* 市場浸透戦略:販路拡大や広告宣伝で消費者にアピール。
* 製品開発戦略:チタンコーティングなど新機能を追加したり、デザインのバリエーションを増やす。
* 市場開拓戦略:文具市場からキッチン市場やキャンプ市場向けに参入する。
* 多角化戦略:なんでもあり。

市場浸透戦略

広告宣伝は実行しやすくて効果も見えやすいので
ついついお金をかけてしまいがち。
しかし「フィットカットカーブ」は機能勝負。
Amazonの商品レビューなど口コミで勝手に市場浸透するはず。
低価格日用品(FMCG, fast moving consumer goods)なら、
なんでも宣伝すれば売れる時代ではない。

製品開発戦略

第1世代がスマッシュヒットしたとき、次の一手の常套手段は新商品の投入。
同じ文具市場なら新商品のヒットも手堅い。
実例がチタンコーディングバージョンの投入。

市場開拓戦略

製品開発戦略で伸び悩んできたら、次に取るべき一手が新市場の開拓。
勝手が分からない新市場への進出はリスクがともなう。
不用意な新規参入は返り討ちにあうかもしれない。
虎穴に入らずんば虎児を得ず、ハイリスク・ハイリターンなり。

はさみの市場開拓戦略の実例

フィットカットカーブの実例として「持ち運び用」と「キッチン用」という2つの新しい市場に参入している。

どちらもフィットカットカーブの強みを活かせる有望市場に思える。
しかしキッチン用なら気になるのは衛生面。
「分解して洗える」機能は必須なのでは?
Amazonの売り上げランキング上位もこの仮説を裏付けていそうだ。

ノックアウトファクターを見つける方法

市場開拓戦略を実行するときは、その市場で欠かすことができない要素=ノックアウトファクターに注意しないといけない。
うっかりすると落とし穴にはまり、文字通り市場からノックアウトをくらってしまう。
競合調査や顧客アンケート、試作品のテストマーケティングなどの事前調査を行い、
ノックアウトファクターに気をつけろ、というケースでした。

キッチンはさみ市場で「分解して洗えること」が必須かどうかは微妙なところ。
フィットカットカーブは「そのまま丸洗いできる」とアピールしているので
衛生面が重視される市場だと自覚しているようだ。
コストなり切れ味なりとのトレードオフで、分解できなくてもGOサインを出したマーケティングのさじ加減、果たして結果やいかに。