ソニーの「RX0」はバケモノか!?
こんにちは。
先日、ソニーのアクションカム「HDR-AS300」を購入し、
「さすがIMX317とBIONZ Xの組み合わせは小さいのによく写るのう。」
「IMX117とアンバレラ(GoProのこと)とは大違いじゃわい。」
とマニアックな部品の違いに独り悦に入るガジェット大好きブロガーのあるばかです。
そんな折、ソニーから前代未聞の新型カメラ「RX0」が発表されました。
Cyber-shot DSC-RX0
「RX0」は110gの超軽量ボディに1.0型大型イメージセンサーを搭載。
桁違いの性能です。
シャア・アズナブルもたまげたことでしょう。
しかも見た目はGoProっぽいけど、あくまでRXシリーズのデジカメであって、アクションカメラではない?!
そんな正体不明の新型「RX0」の企画意図を調べました。
目次
スペック比較
まず「RX0」と似た位置づけにある次の3製品とスペックを比較します。
主要仕様の比較表がこちら。
RX0 | RX100M5 | FDR-X3000 | HERO5 Black | |
---|---|---|---|---|
【イメージセンサー】 | ||||
概要 | 1.0型 Exmor RS | ← | 1/2.5型 Exmor R | 1/2.3型 Exmor R |
総画素数 | 2100万画素 | ← | 857万画素 | 1200万画素 |
有効画素数 | 1530万画素 | 2020万画素 | 800万画素 | 不明 |
画素ピッチ | 2.4um | ← | 1.62um | 1.55um |
【レンズ】 | ||||
概要 | ZEIS Tessor T*(6群6枚) | ZEIS Vario-Sonnar T*(9群10枚) | ZEISS Tessor | ノーブランド |
絞り値 | F4.0 | F1.8〜2.8 | F2.8 | F2.8 |
35mm換算焦点距離 | 24mm | 24mm〜70mm | 17mm, 23mm, 32mm | 14mm, 21mm, 28mm |
最大対角画角 | 84度 | ← |
170度 ※記録画角:非開示 |
170度 ※記録画角:149.2度 |
【機能】 | ||||
画像処理エンジン | BIONZ X | BIONZ X + フロントエンドLSI | BIONZ X | Ambarella A9SE7 |
手ぶれ補正 | なし | 光学式+電子式、5軸 | 空間光学式、2軸 | 電子式 |
防水 | 防水10m | 非対応 | 防滴 | 防水10m |
4k録画 |
非対応 ※HDMI出力可 |
対応 | 対応 | 対応 |
スローモーション撮影 | 最大960fps | ← | 最大240fps | 最大240fps |
【プロ向け機能】 | ||||
RAW撮影 | 対応 | ← | 非対応 | 対応 |
ピクチャープロファイル | S-Log2対応 | ← | 非対応 | 非対応 |
マルチカメラ制御 |
・電波式ワイヤレスコマンダー ・有線式コントロールボックス |
非対応 | WiFi連動 | WiFi連動 |
【価格】 | ||||
発売日 | 2017年10月 | 2016年10月 | 2016年6月 | 2016年10月 |
実売価格 | 約8万円 | 約10万円 | 約4万5千円 | 約5万5千円 |
【サイズ】 | ||||
寸法 | 59.0 x 40.5 x 29.8mm | 101.6 x 58.1 x 41.0mm | 29.4 x 47.0 x 83.0mm | 62 x 44.6 x 33.7mm |
重量(バッテリー込み) | 110g | 299g | 114g | 120g |
「圧倒的な描写力」と「驚愕の小ささ」を両立
RX0の最大の特徴は「圧倒的な描写力」を「驚愕の小ささ」で実現したことです。
HERO5同等以下のコンパクトサイズながら、デジカメ級イメージセンサーを搭載したモンスタースペックです。
プロ仕様のマルチカメラコントロール
「高度なマルチカメラコントロール」もRX0だけの特徴です。
GoProやFDR-X3000もWiFi経由で複数台の制御ができますが、シャッター連動や映像転送くらい。
RX0なら有線式のカメラコントロールボックスのオプションが用意されています。
仕様比較表の補足
数値は基本的に概数です。
以下、細かい特徴の補足です。
Exmor RS
ExmorはソニーのCMOSイメージセンサーのブランド名称です。
Rは高感度な裏面照射型のこと。
Sは高速処理が可能な積層型のこと。
RXシリーズでは高感度な裏面照射型CMOSイメージセンサー、信号処理回路、DRAMメモリの3層を積層した最新型Exmor RSを採用しています。
DRAMメモリを積層することでイメージセンサーの読み出し速度が向上し、ローリングシャッター歪みを抑える1/32000秒の高速シャッター、960fpsの超ハイスピード撮影が可能になりました。
有効画素数
RX0とRX100Vは同じイメージセンサーです。
有効画素数が1530万画素ということは、RX0はRX100Vと比較してイメージセンサーの24%分の面積を捨てていることになります。
なぜそんなもったいないことをするのでしょうか?
おそらく本体をGoPro以下に収めるためでしょう。
センサーサイズが小さいほどレンズを小型化できるからです。
普通、24%も捨てるならもっと小さいイメージセンサーを選択します。
あえて1.0型を採用したことにRXシリーズのこだわりがうかがえます。
このイメージセンサを使うことで、RX100M5同等の撮影機能、高感度特性を活かした小型レンズの設計が可能になりました。
画素ピッチ
画素ピッチ(ピクセルサイズ)は仕様公開されていない計算上の概算値です。
同じソニーのイメージセンサを採用するGoProと比較して、RX0は面積比で約2.4倍も大きい画素ピッチです。
画素ピッチが大きいほど高感度に強くなります。
これまでのアクションカメラの場合、室内の暗い環境ではノイズが増えて眠たい画質になってしまいました。
画素ピッチが巨大なRX0なら感度をあげても余裕があるはず?
少なくともレンズの暗さは補ってくれそうです。
レンズ
RS0のレンズはF4.0固定でアクションカメラとしては暗い設計です。
レンズの明るさを絞るかわりに、シャープな画質や歪みを抑えることを優先したと思われます。
「T*(スター)」はカール・ツァイスの高級レンズコーティング技術です。
オートフォーカス
これまでのアクションカメラはパンフォーカス(固定焦点)が常識でした。
RX0はこのサイズでAFを搭載しているのも画期的な点です。
手ぶれ補正
残念ながらRX0は手ぶれ補正機能は非搭載。
外付けジンバルで対応できるとはいえ、内蔵されていると便利な機能です。
画角やAF搭載というスペックからすると、手ブレにはシビアに思えます。
スマホのカメラもAFと光学式手ぶれ補正が当たり前になっていますし、
次のモデルでは手ぶれ補正が搭載されそうな予感。
画像処理エンジン
RX0ではフロントエンドLSIが省略されています。
フロントエンドLSIはBIONZ Xの処理をサポートする役割でした。
仕様的に目立つ違いは本体での4k録画対応くらいですが、細かい操作のレスポンスに影響がないのか、気になる所です。
ソニーが自社開発の画像処理エンジンなのに対し、GoProは米アンバレラ社のチップです。
出力フォーマット
写真はRAW形式、動画はピクチャープロファイルに対応しています。
とかく「インスタ映え」が持てはやされ、画像加工アプリ全盛の昨今ですが、FDR-X3000のようなコンシューマ機にもRAW撮影くらいは対応してほしいな。
RX0のターゲットユーザーは?
ぶっ飛んだスペックのRX0がぴったりハマる用途・ユーザは何でしょうか?
GoProとは別格の描写力
アクションカメラは便利だけど画質がイマイチだと不満を感じていたユーザーにとって、RX0は画期的な機種となりそうです。
アクションカメラの画角ではない
しかしアクションカメラとしては画角が狭すぎます。
アクションカメラは超広角レンズで歪みまくりながら迫力ある画が特徴。
一方のRX0は歪みを抑えた広角レンズ。
操作性ならRX100M5
超コンパクトサイズとひきかえにボタンの操作性は見るからに厳しそう。
普通にカメラとして使うならRX100M5のほうがずっと使いやすいかと。
結論:使う人を選ぶ玄人向け
アクションカメラっぽいけど画角が足りない。
デジカメとしては操作性がよくない。
普通のアクションカメラやデジカメとしては中途半端な予感です。
RX0のハマるのは複数台をガシガシ連動させるプロフェッショナルな現場やハイアマチュアの玄人向けということになりそうです。
ソニーが提案する企画意図
RX0のターゲットユーザを深掘りすべく、ソニーの企画意図を調べてみます。
プレスリリースやカタログからそれっぽい表現を集めてみました。
「今までにない新しい視点」
「新しい映像表現」
「表現の無限の可能性」
「新たな映像世界」
「クリエイターの創造力を刺激する」
どうやらアート方面を狙っている?
もっと本音が分かりやすいインタビュー記事がありました。
デジカメ路線にするのか、アクションカメラ路線にするのか、市場の反応を見て決めるようです。
売場は、どこに置くか考えているところ。
RXシリーズの横がいいのか、GoProのコーナー近くがいいのか、両方トライしようとしている。
どちらも行ける可能性があって楽しみ。
ソニーヨーロッパがスマートスピーカーやRX0を投入する狙い - AV Watch
作例もぶっ飛んでいる
RX0の作例がいろんな意味で面白いです。
作例はむちゃくちゃ手の込んだ特殊撮影ばかり。
どれでも素晴らしい作品です。
「新しい視点」とか「クリエイターの想像力を刺激する」とか、ソニーの目指すコンセプトは伝わります。
でも、ふと疑問を感じるわけです。
「RX0を買ったら、旅行でどんな映像・写真が撮れるんだろうか?」と。
感想
「RX0」はガジェット好きを刺激する意欲作ですね。
なにを目指しているのかよくわからないけど、こういうチャレンジングな製品は大好きです。
「革新的なプロダクト」はスティーブ・ジョブズのような天才でなくても生み出せる(はず)なのです。
その好例がGoProです。
GoProが誕生したきっかけは創業者ニック・ウッドマンの
「サーフィン姿をかっこよく撮りたい」
というニッチな着想に過ぎませんでした。
それがトライ&エラーを繰り返すうちにコンセプトが洗練され、
「アクションカメラ」という形に結晶化されました。
参考:「GoPro」誕生秘話 - GIGAZINE
「RX0」がどういう進化をしていくのか、楽しみです。