スタイリッシュ&ハイスペックなラズパイ・クローン「Khadas VIM2」
値段に見合った価値がある、とんがった仕様のシングルボードコンピュータ「Khadas VIM2 MAX」のレビューです。
ルパン三世で例えると、みんな大好きRaspberry Piがルパン、Khadas VIM2は無口な仕事人の次元大介みたいなガジェットです。
目次
特徴
カスマイズ性
Khadas VIM2は、オープンソースでハードウェアレベルからカスタマイズできます。
デフォルトでは普通のAndroid TV Boxとしても使えます。
Linux系OSイメージをインストールしたり、
内蔵フラッシュとSDのデュアルブードも簡単に設定できます。
Amlogic系SoCを採用したAndroid TV Boxだと、すんなりArmbianをインストールできる機種が多いです。
Amlogic系Android TV boxにLinuxをインストールする - おばかさんよね。
とはいえ、ドライバの互換性やアップデート頻度を考えると、ちょっと割高でもKhadas VIM2のほうが安心です。
電源制御マイコン
「分かってるなあ」と感心したのが電源制御用マイコンを搭載していること。
WoL(Wake On LAN)や赤外線リモコンやGPIOの割り込みによって、CPUの電源オンオフを任意に設定できます。
SoCのスリープ機能はOSやドライバとの相性によって動作しないことが多いので、非常に重宝する機能です。
仕様
ラズパイとの比較
18年3月に発売されたラズパイ3 B+との比較表がこちらです。
WiFi/Bluetoothのようにどちらも対応している機能は省略しています。
VIM2 MAX | Raspberry Pi 3 B+ | |
---|---|---|
SoC | Amlogic S912 | Broadcom BCM2837B0 |
CPU | 1.5GHz 8コア | 1.4GHz 4コア |
メモリ | 3GB DDR4 | 1GB DDR2 |
内蔵ストレージ | 64GB eMMC | なし |
映像出力 | 10bit 4k | 1080p 60fps |
赤外線リモコン | 対応 | なし |
WoL | 対応 | 非対応 |
電源マイコン | 搭載 | なし |
ラズパイが古いアーキテクチャのSoCを使い続けて、教育用として後方互換性を重視しているのに対し、Khadas VIM2は新しいSoCで圧倒的に高性能です。
さらにKhadasは電源制御用マイコンや赤外線リモコンの受光素子を搭載し、電子工作全般で汎用的に使いやすいように工夫されています。
シリーズの比較
VIM2はスペックが高い順にMax > Pro >> Basic > Liteの2モデル展開されています。
主な違いは内蔵ストレージとSoCです。
BasicとLiteのSoCは初代VIMと同じS905Dです。
詳しいスペック表はこちらをどうぞ。
Khadas VIM2
さらにRaspberry Pi Zeroと同じようなIoT向けカードサイズSBC「Edge」もあります。
EdgeはSoCにRockchip RK3399を搭載しています。
カードサイズだけど処理能力も必要、HDMIやUSB端子も内蔵してほしいという欲張りさんにはぴったりの端末です。
Edge Specs
起動オプションの設定方法
WoLやリモコンの起動オプションの設定方法をご紹介します。
VIM2が内蔵しているEEPROM内蔵8bitマイコンSTM8S003の設定を書き換えます。
まずUSB-TTL変換キットを用意して、GPIO経由でシリアル通信します。
Setup Serial Debugging Tool | Khadas Docs
具体的な設定方法はKBI(Khadas Bootloader Instructions)として公開されています。
KBI Guidance for Khadas VIM2 | Khadas Docs
GPIO
ラズパイと同じ40ピンですが、端子レイアウトは互換性がありません。
VIM2 GPIO Pinout
40pinコネクタは流用できるので、ラズパイ用の電子工作キットを流用して遊べます。
ピンアサインは互換性がないので、ラズパイやArduino用の各種シールドは基本的に流用できません。
動画
Gearbestの解説動画
感想
ここが良い(・∀・)イイ!!
外見
黒い基板とアクリル基板がスタイリッシュでかっこいいです。
プロトタイプガンダムのような只者ならぬ雰囲気をかもします。
SBCを組み込んだ電子工作を披露するとき、ラズパイよりVIM2を使ったほうが見栄えがいいです。
展示した時の見栄え・・・なにげないけど、大切なことです。
内蔵ストレージと電源制御マイコン
SDカードを起動ディスクとして使うのは性能的ボトルネックになるし、信頼性もいまいち。
大容量のeMMCを内蔵しているのが便利です。
電源制御マイコンも実に渋い仕様です。
TV boxもスマホも同じですが、
Androidをコールドスタート(再起動)したら時間がかかってしまうので、
リモコンで電源オフにしても、シャットダウンせず、スリープ状態になる仕様が一般です。
とはいえ、Apple TVやFire TVのようにスリープ時に1W以下の低消費にするのは作り込みが大変です。
でも、だからといってOSをシャットダウンする仕様にすると、今度はリモコンで電源オンできなくなります。
そこで電源制御用のマイコンを搭載することで、
SoCは完全オフの超低消費電力状態ながら、
WoL、赤外線、GPIO等の各種トリガーを常時待受できるのです。
ソーラーパネルとかBLEとか、モバイルバッテリーとか、エナジーハーベストとか、そういうIoT的な何かを組み合わせれば・・・!?
アイデアしだいで、めちゃくちゃ面白い使い方ができそうです。
ここがイマイチ(´・ω・`)
ドキュメントが発展途上
徐々に改善されていますが、公式ドキュメントの情報が不足していて、分かりづらいことが多かったです。
VIM2 Documentation
フォーラムは活発なので、このまま発展してくれると良いのですが。
ラズパイと互換性がない
仕方がないとはいえ、ラズパイとの互換性がないのが残念でなりません。
たとえば40pin GPIOの変換ケーブルとか、ドライバの互換性が確認できたとか、
ラズパイの豊富なリソースを転用できると嬉しかった。
オプション
リモコン
純正の赤外線リモコンです。
本体操作はマウスなりBluetoothリモコンでも良いですが、
VIM2は赤外線信号の学習機能はないので、リモコンで電源制御するなら必須です。
HiFiオーディオ
XMOSのUBSコントローラ、低ノイズLDO、ESSのスマホ用高級DAC ES9038Q2Mを搭載したこだわりのオーディオボードです。
VIM2と一体感のあるデザインですが、汎用的にも使えます。
Generic EditionはUSB Type C端子でWindows/Mac/Linux用USBヘッドホンアンプとして動作します。
ラズパイでも使えます。
VIM用、汎用と別々にしないで、どちらでも使えるようにしてほしかったところ。
それはさておき、ES9038Q2M搭載で細部もこだわった外付USBオーディオボードとして、1万2000円という値段は中々魅力的です。
まとめ
ラズパイ用リソースを転用しづらいのがネック。
でもラズパイにこだわる必要がないなら、ハイスペックでイジりがいのある1台です。