おばかさんよね。

スタイリッシュ&ハイスペックなラズパイ・クローン「Khadas VIM2」


値段に見合った価値がある、とんがった仕様のシングルボードコンピュータ「Khadas VIM2 MAX」のレビューです。
ルパン三世で例えると、みんな大好きRaspberry Piがルパン、Khadas VIM2は無口な仕事人の次元大介みたいなガジェットです。

VIM2
Gearbestで1.5万円

特徴

カスマイズ性

Khadas VIM2は、オープンソースでハードウェアレベルからカスタマイズできます。

デフォルトでは普通のAndroid TV Boxとしても使えます。
Linux系OSイメージをインストールしたり、
内蔵フラッシュとSDのデュアルブードも簡単に設定できます。

Amlogic系SoCを採用したAndroid TV Boxだと、すんなりArmbianをインストールできる機種が多いです。
Amlogic系Android TV boxにLinuxをインストールする - おばかさんよね。
とはいえ、ドライバの互換性やアップデート頻度を考えると、ちょっと割高でもKhadas VIM2のほうが安心です。

電源制御マイコン

「分かってるなあ」と感心したのが電源制御用マイコンを搭載していること。

WoL(Wake On LAN)や赤外線リモコンやGPIOの割り込みによって、CPUの電源オンオフを任意に設定できます。
SoCのスリープ機能はOSやドライバとの相性によって動作しないことが多いので、非常に重宝する機能です。

仕様

ラズパイとの比較

18年3月に発売されたラズパイ3 B+との比較表がこちらです。
WiFi/Bluetoothのようにどちらも対応している機能は省略しています。

VIM2 MAX Raspberry Pi 3 B+
SoC Amlogic S912 Broadcom BCM2837B0
CPU 1.5GHz 8コア 1.4GHz 4コア
メモリ 3GB DDR4 1GB DDR2
内蔵ストレージ 64GB eMMC なし
映像出力 10bit 4k 1080p 60fps
赤外線リモコン 対応 なし
WoL 対応 非対応
電源マイコン 搭載 なし

ラズパイが古いアーキテクチャのSoCを使い続けて、教育用として後方互換性を重視しているのに対し、Khadas VIM2は新しいSoCで圧倒的に高性能です。

さらにKhadasは電源制御用マイコンや赤外線リモコンの受光素子を搭載し、電子工作全般で汎用的に使いやすいように工夫されています。

シリーズの比較

VIM2はスペックが高い順にMax > Pro >> Basic > Liteの2モデル展開されています。
主な違いは内蔵ストレージとSoCです。
BasicとLiteのSoCは初代VIMと同じS905Dです。

詳しいスペック表はこちらをどうぞ。
Khadas VIM2

さらにRaspberry Pi Zeroと同じようなIoT向けカードサイズSBC「Edge」もあります。
EdgeはSoCにRockchip RK3399を搭載しています。
カードサイズだけど処理能力も必要、HDMIやUSB端子も内蔵してほしいという欲張りさんにはぴったりの端末です。
Edge Specs

起動オプションの設定方法

WoLやリモコンの起動オプションの設定方法をご紹介します。
VIM2が内蔵しているEEPROM内蔵8bitマイコンSTM8S003の設定を書き換えます。

まずUSB-TTL変換キットを用意して、GPIO経由でシリアル通信します。

Setup Serial Debugging Tool | Khadas Docs

具体的な設定方法はKBI(Khadas Bootloader Instructions)として公開されています。
KBI Guidance for Khadas VIM2 | Khadas Docs

GPIO

ラズパイと同じ40ピンですが、端子レイアウトは互換性がありません。
VIM2 GPIO Pinout

40pinコネクタは流用できるので、ラズパイ用の電子工作キットを流用して遊べます。

ピンアサインは互換性がないので、ラズパイやArduino用の各種シールドは基本的に流用できません。

動画

Gearbestの解説動画

感想

ここが良い(・∀・)イイ!!

外見

黒い基板とアクリル基板がスタイリッシュでかっこいいです。

プロトタイプガンダムのような只者ならぬ雰囲気をかもします。
SBCを組み込んだ電子工作を披露するとき、ラズパイよりVIM2を使ったほうが見栄えがいいです。
展示した時の見栄え・・・なにげないけど、大切なことです。

内蔵ストレージと電源制御マイコン

SDカードを起動ディスクとして使うのは性能的ボトルネックになるし、信頼性もいまいち。
大容量のeMMCを内蔵しているのが便利です。

電源制御マイコンも実に渋い仕様です。

TV boxもスマホも同じですが、
Androidをコールドスタート(再起動)したら時間がかかってしまうので、
リモコンで電源オフにしても、シャットダウンせず、スリープ状態になる仕様が一般です。

とはいえ、Apple TVやFire TVのようにスリープ時に1W以下の低消費にするのは作り込みが大変です。
でも、だからといってOSをシャットダウンする仕様にすると、今度はリモコンで電源オンできなくなります。

そこで電源制御用のマイコンを搭載することで、
SoCは完全オフの超低消費電力状態ながら、
WoL、赤外線、GPIO等の各種トリガーを常時待受できるのです。
ソーラーパネルとかBLEとか、モバイルバッテリーとか、エナジーハーベストとか、そういうIoT的な何かを組み合わせれば・・・!?
アイデアしだいで、めちゃくちゃ面白い使い方ができそうです。

ここがイマイチ(´・ω・`)

ドキュメントが発展途上

徐々に改善されていますが、公式ドキュメントの情報が不足していて、分かりづらいことが多かったです。
VIM2 Documentation

フォーラムは活発なので、このまま発展してくれると良いのですが。

ラズパイと互換性がない

仕方がないとはいえ、ラズパイとの互換性がないのが残念でなりません。
たとえば40pin GPIOの変換ケーブルとか、ドライバの互換性が確認できたとか、
ラズパイの豊富なリソースを転用できると嬉しかった。

オプション

リモコン

VIM2用リモコン
実売500円

純正の赤外線リモコンです。
本体操作はマウスなりBluetoothリモコンでも良いですが、
VIM2は赤外線信号の学習機能はないので、リモコンで電源制御するなら必須です。

HiFiオーディオ

Tone Board
Gearbestで1.2万円

XMOSのUBSコントローラ、低ノイズLDO、ESSのスマホ用高級DAC ES9038Q2Mを搭載したこだわりのオーディオボードです。

VIM2と一体感のあるデザインですが、汎用的にも使えます。
Generic EditionはUSB Type C端子でWindows/Mac/Linux用USBヘッドホンアンプとして動作します。
ラズパイでも使えます。

VIM用、汎用と別々にしないで、どちらでも使えるようにしてほしかったところ。
それはさておき、ES9038Q2M搭載で細部もこだわった外付USBオーディオボードとして、1万2000円という値段は中々魅力的です。

まとめ

ラズパイ用リソースを転用しづらいのがネック。
でもラズパイにこだわる必要がないなら、ハイスペックでイジりがいのある1台です。

VIM2
Gearbestで1.5万円