樂吃購の吉田皓一さん
中華圏で日本人が起業して成功した稀有なケースを知った。
「樂吃購(ライチーゴー)」というウェブメディアを運営する吉田皓一さんだ。
ビジネスモデル
台湾(と香港)旅行客に特化した日本観光情報サイト「樂吃購(ライチーゴー)」が主軸。
台湾でNo.1の知名度が強み。月間420万PV、ユニークユーザー70万人。
台湾人ライターによるネイティブ視点の記事がこだわり。
インバウンド収益を強化したいクライアントから広告収入を得ている。
主なクライアントは飲食(一風堂、銀だこ、かに道楽)、百貨店(高島屋、マツモトキヨシ)、化粧品(資生堂)、観光(神戸ハーバーランド)、ホテル、地方自治体(岩手県、奈良市、陸奥市)。その他在台テレビ局との橋渡しも。
事業規模
2016年時点の情報。ウェブメディアとしてはかなり人数が多いので広告販売や事業多角化が順調のように見える。
・資本金:1000万円
・従業員数:日本側23名(日本人7名、台湾人15名、香港人1名)、台湾側18名
・オフィス:東京、大阪、台湾の3拠点+台湾でカフェ1店舗
ヒストリー
・阪神淡路大震災の経験から自衛隊を志し、防衛大学に進学した。
→しかし、渋谷でバカ騒ぎする若者を見て、外の世界に魅力を感じる。
・普通の大学に入り直してテニスサークルに入りたくなり、慶應大学経済学部に進学した。
→大学では中国語の学習に注力した。
・留年して内定取り消しされたが、2度目の就活で朝日放送に入社する。
→旧態依然としたテレビ業界に疑問を感じ、退社する。
・働きながらやりたいことを探せると考え、海外貿易の物流ベンチャーに入社する。
→中国とのビジネスは罠が多くて危険だと実感し、台湾にターゲットを絞る
・Facebookに日本の情報を投稿したら想定以上のアクセスが集まる。
→2011年に台湾とオープンスカイ協定ができて観光客が急増したため。
・2013年に台湾向け日本観光情報サイト「樂吃購(ライチーゴー)」を開設した。
成功のキーポイント
吉田皓一さんの成功の秘密は3つあると思う。
①アンテナを貼り続けること
行き当たりばったりのキャリアに見えて、実は共通するテーマがあるように思う。
台湾と日本のオープンスカイ協定で訪日観光客が急増するタイミングと重なったという幸運もあるが、
そもそも時代のうねりをとらえるアンテナを磨き続けていたから、
チャンスをつかむことができた。
②大胆な差別化戦略
英語は帰国子女が多いから中国語を習得し、
起業する時は中国を避けて台湾を狙うなど、
非常に鋭い感性で戦略的な選択をされている。
いずれも市場規模や成長率などデータから将来を予想しているかぎりはできない選択だと思うが、
結果として、この2つの選択が成功に結びついている。
③コミュニケーション能力
防大中退して慶應のテニサーから二浪して準キー局で電・博相手に営業…きっと超サイヤ人なんだと思う。
将来の予想
勝手に成長戦略を考えてみる。
足元の台湾向けウェブメディア事業は適度にニッチでとても良い市場だと思う。
利益率は「広告収入:記事単価」の比率に制約される労働集約型のビジネスなので、楽天のような大手は参入しづらい。
しかし中期的にはトリップアドバイザーのような口コミ投稿サイトが台頭してきたり、同業他社との競争が厳しくなり、収益性は下がっていくだろう。
知名度No.1というポジションを確保しているうちに、口コミ投稿などユーザ主導型コンテンツを導入して、参入障壁を構築すべきだと思う。あるいは日本と台湾のクライアントとのコネクションを活用して、商社のような新規事業につなげる出口戦略にも活路がありそうだ。
参考
補足
台湾で最も有名な日本人は誰?マジレスすると福原愛だと思う。