GMのEV戦略を分析。キーファクターはバッテリー技術か、政治力か。

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公開日： 2018/02/18

EV（電気自動車）は補助金頼みの脆弱なマーケットです。
どの自動車メーカーも自力では利益を出せていません。
テスラですらモデル３の量産が遅々として進まず、赤字を垂れ流している状況です。
そんななか、GMはEVに野心的な目標を発表しました。

GM「EV黒字化宣言」

「2021年までにEV事業の黒字化を実現する」
米 GM（ゼネラル・モーターズ）のMary Barra（メアリー・バッラ）CEOは大胆な公約をぶち上げました。

Mary Barra氏は戦略の詳細を語りませんでしたが、GMには3つの秘策があります。

GMは2021年までにバッテリーセルのコストを３割以上削減、
具体的には1kWhあたり145ドルから100ドル以下になるという見通しを示しています。
GMはバッテリーパックが車両製造費の70〜75%を占めていることも開示しています。

バッテリーのコスト削減の鍵となるのが、GMの次世代バッテリーシステム「EMC1.0」です。
特に注目されているのが、
リチウムイオン電池の正極材に使うコバルトを減らし、ニッケルを増やすことで、
コスト削減と高エネルギー密度化を両立させる取り組みです。

GMはLG化学と協業し、バッテリー技術の開発を進めています。

GMは1kWhあたり145ドルでLG化学からバッテリー・セルを調達していると2015年に発表しています。
関係者によると、当時の水準で100ドルも安い価格だったそうです。
車載にかけるLG化学の必死さが垣間見えます。

LGが得意な車載用ラミネート型セル

GM「Bolt EV」の分解写真

GMは上海汽車（SAIC）と協力し、
従来より小規模・高効率・シンプルなEV専用工場を建設する計画です。

世界で唯一、本気でEVを普及させようとしている国が中国です。
「中国で売れること」がEV黒字化の絶対必要条件です。

GMは欧州撤退など赤字事業のリストラを行い、
EVに集中投資できる財務体制が整いました。
北米のピックアップトラックで稼いだキャッシュをEVの先行投資につぎ込む戦略です。

まだまだ外部からの資金調達が必要なテスラに比べ、GMはずっと骨太な体制です。

当面、EV市場の重心は中国にあり、重視されるのは技術力よりも政治力だと思います。
GMの政治的ポジションは対中国では不利でしょう。
実際、ドイツのVW（フォルクス・ワーゲン）のほうが中国にうまく入り込めています。

キーパーツのリチウムイオン電池に関して、LG化学も中国政府の規制に苦戦しています。
ニッケルリッチなEMC1.0だけでは中国のEV市場は攻略できないでしょう。

GMの武器はバッテリー技術と北米市場でのシェアです。
例えば、中華系部品サプライヤーを積極的に採用したEV戦略車を開発し、同じプラットフォームを北米にも展開するようなGive&Takeの交渉が成否の鍵になると思います。

ニッケルリッチ化はみんなやっているし、コバルトの次はニッケルも投機マネーで値上がりしている。
アングル：ＥＶ普及で需要拡大、ニッケル市場の「勝者と敗者」

中国企業はコバルト鉱山に投資している。
コバルトフリーは中国政府の意向に反する。
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