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技術的に注目すべきミリ波レーダー関連銘柄

公開日:  更新日: 2017/10/08

radar
ミリ波レーダー市場の有力プレイヤーをまとめました。
業界地図の把握、ミリ波レーダー関連銘柄に投資する時の参考になれば幸いです。

ミリ波レーダーの市場動向はこちらの記事をどうぞ。
ドヤ顔でミリ波レーダーを語るために知っておきたい5つの新・常識 - おばかさんよね。

メガサプライヤー

Robert Bosch(非上場)

InfineonのSiGeチップ「RASIC」を採用し、ミリ波レーダー市場を開拓したパイオニアです。

Boschが次世代自動車レーダーシステムにインフィニオンのレーダーチップを採用 - Infineon Technologies
夜間、霧中での安全性:市場リーダーのインフィニオン、車載用レーダーチップの出荷個数が1,000万個を突破 - Infineon Technologies
EUの79GHz帯レーダー動向

Continental(ドイツ:CON)

車載レーダーの世界シェア1位(約40%)。
安価な赤外線レーザーレーダーではトップシェアですが、ミリ波レーダーはボッシュに遅れを取っていました。

トヨタの世界戦略車「C-HR」でミリ波レーダーの受注獲得が話題になりました。
得意とする赤外線レーザーレーダーが採用されていた「Toyota Safety Sense C」に引き続き、上位グレードの「Safety Sense P」でもデンソーを押しのけ参入を果たしたことになります。 
Continental社がデンソーを猛追 - 日経テクノロジーオンライン

デンソー(東証:6902)

トヨタ系列。
最近の注目トピックはこんな感じです。

  • 2017年10月付けで富士通テンを子会社化。パテント・リザルトによる調査では富士通テンは車載レーダーの特許総合力第2位。
  • トヨタ向けもContinentalとの価格競争が不可避に。

車載用レーダー関連技術、特許総合力トップ3はデンソー、富士通テン、三菱電機 | 特許分析のパテント・リザルト

Tier1サプライヤー

HELLA(非上場)

ヘッドライトが強いHELLAは、24GHz狭帯域の準ミリ波レーダーで高いシェアを持っています。
2012年にInnoSenT(イノセント)を買収し、レーダーの開発強化を打ち出しています。
NXPのCMOSチップを採用し、360度周辺監視できる77GHz帯レーダーソリューションを発表しています。

HELLA、24GHzレーダーセンサーの生産が1000万台を達成 - オートモーティブ・ジョブズ<br<
【フランクフルトモーターショー2017】HELLA、新レーダーセンサー発表へ…高度な自動運転車用 | レスポンス(Response.jp)

半導体メーカー

Infineon(ドイツ:IFX)

Infineon(インフィニオン)はドイツの家電メーカー「シーメンス」の半導体部門からスピンオフした企業。
車載エレクトロニクス分野の半導体売上ランキングでNXPについで世界2位。

ミリ波レーダー用SiGeチップのマーケットリーダーです。
ドイツ政府の国家プロジェクト「RoCC(Radar on Chip for Cars)」で、自動車メーカー(BMW、ダイムラー)やTier1サプライヤー(ボッシュ、コンチネンタル)と連携して開発していました。

インフィニオンの車載事業紹介
最新の安全性技術の普及をめざすRoCC共同技術開発プロジェクト -自動車メーカーおよびサプライヤーが協力し、あらゆるクラスの自動車で使えるレーダーセンサシステムを開発 - Infineon Technologies
Bosch社の次期ミリ波レーダー、Infineon社のSiGeチップを採用 EDN Japan(2009年4月)

CMOSモノリシック化についてもR&Dを進めています。
2016年にベルギーの研究機関「imec」と79GHz帯CMOSチップの共同研究すると発表しています。
とはいえ、CMOSモノリシック化はNXP、ADI、TIより出遅れている印象です。
imecとInfineonが共同で車載用79GHz CMOSレーダーセンサチップを開発 | マイナビニュース

Freescale(NXPが買収)

Freescale(フリースケール)はミリ波レーダー用SiGeチップではInfineonについで2番手。
市場実績で先行するBosch・Infineon連合を巻き返すため、Continentalとの提携を発表していました。
車載半導体:ミリ波レーダーSiGeチップ2社が大手ティア1サプライヤと連携、ADASをより安価に (2/2) - MONOist(モノイスト)

NXP(NASDAQ:NXPI)

NXPはオランダの家電メーカー「フィリップス」の半導体部門からスピンオフした企業。
2015年にFreescale(フリースケール)を買収し、車載エレクトロニクス分野の半導体売上ランキングで世界1位の企業となりました。

2016年に今度はQualcommがNXPを買収すると発表しました。
欧州規制当局の承認が降りるのか、不安視されていますが、順調に行けば2017年中に買収完了となる予定です。

NXPは独自のミリ波レーダー用CMOSモノリシックICをいち早く発表しています。

2013年末には60GHz帯の「Wireless HDMI」技術を応用し、80GHzの送受信ICのテストチップ「Dolphin」の開発に成功しています。

2016年CESでは77GHz帯の送受信ICを発表。
SiGeチップ2〜3個分をRF CMOSプロセスで1チップに集積した超小型チップとして注目されました。
NXPのミリ波レーダー用ICがGoogle(waymo?)の自動運転プロジェクトで採用されていることも示唆されています。

2016年6月、NXPの送受信ICがドイツ HELLA(ヘラ)で採用されたことが発表されました。
HELLAの新型77GHzレーダーは2018年中頃にリリース予定です。
順調にいけば、量産採用されたCMOSモノリシックのミリ波レーダー用送受信ICとしてNXPが世界初となるはずです。

前側方や後側方の周辺監視用SRRはNXPのCMOS、前方監視用LRRはFreescaleのSiGeとオールレンジな提案ができるのがNXPの強みです。

NXP to Focus on All CMOS Radar Future | EE Times
CES 2016:NXP、7.5mm角の77GHz帯レーダーチップを披露 - EE Times Japan
車載半導体:グーグルの自動運転車も採用か、NXPがCMOSベースの77GHzミリ波レーダーICを発表 - MONOist(モノイスト)
Hella makes the jump to 77GHz radar | EETE Automotive
HELLA Pressemitteilung

Analog Devices(NASDAQ:ADI)

Analog Devices(アナログ・デバイセズ、ADI)もCMOS化を武器にして、ミリ波レーダー市場への参入を狙っています。
ADIのレーダープラットフォーム「Drive360」では、28nm CMOSプロセスの1チップで77GHz/79GHz帯に対応可能。

2017年4月にはルネサスのレーダー用マイコンと提携発表。
NXP・Freescale連合に対抗しうる有力プレイヤーとなりそうです。

アナログ・デバイセズとルネサスが ADASを向上させ自動運転を実現する 77/79 GHz帯オートモーティブ用レーダー技術を共同開発 | アナログ・デバイセズ
「28nm CMOSプロセスの採用により76GHzから81GHzをカバー」

Texas Instruments(NASDAQ:TXN)

Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ、TI)もCMOSプロセスでミリ波レーダー用ICを発表しています。
TIの特徴は集積度が高いこと。
トランシーバー、ベースバンドといったレーダーフロントエンドを1チップ化したことに加えて、MCUとDSPも1チップに統合しています。

毛髪を検出できるミリ波レーダーICをCMOSで実装、TIが発売 - 日経テクノロジーオンライン
CMOS技術により実現するミリ波センサの小型化 - プロセッサ - Japanese E2E (日本語コミュニティ) - TI E2E Community

あるばかの感想

現在のミリ波レーダー市場は欧州企業の牙城です。
レーダーモジュールはボッシュとコンチネンタル、キーパーツの送受信ICはインフィニオンのSiGeチップが圧倒的なシェアを握っています。

79GHz帯とCMOSチップの開発競争で、このパワーバランスが変化するのか、注目しています。

この市場のプレイヤーは大手企業ばかりですし、1社が独占するとは思えないので、NVIDIAのような一本釣り投資は難しいと思います。
ADAS関連のテーマ投資的発想で、有力企業に分散投資するのが無難でしょう。

ミリ波レーダーは成長期待が大きい市場のため、M&Aの動きにも注目です。
これまでもレーダー分野に関係する企業の買収が数多くありました。
富士通テン(デンソーが買収)、InnoSenT(ヘラが買収)、フリースケール(NXPが買収)、NXP(クアルコムが買収)、ホンダエレシス(日本電産が買収)など。