おばかさんよね。

なぜBroadcomのQualcomm買収は禁止されたの?

公開日:  更新日: 2018/03/22

Qualcommの買収騒動は「米国の安全保障上の理由」から大統領令で禁止される結果となりました。
Broadcomは本社を米国に移すと発表していました。
どうもスッキリしないので深掘りしてみましたよ。

Broadcomは中国政府と通じている?

ポイントのひとつが
「Broadcomは中国政府とつながっている」
とアメリカ政府が断定したということです。
決定的な証拠は明らかになっていませんが、アメリカ政府にいわせれば「ネタはつかんでるんだぞ」と匂わせる感じです。

BroadcomとHuaweiのつながり

指摘されているのがBroadcom(ブロードコム)とHuawei(ファーウェイ、華為)の関係です。

対米外国投資委員会(CFIUS)関係者の情報としてロイターはこう報じています。
・BroadcomがQualcommを買収したら、5G技術がHuaweiに流れる。
・そうなったら5G技術をHuaweiが牛耳り、米国は軍需用含め、通信機器をHuaweiから調達せざるを得なくなる。
・5G技術の中国企業への流出は米国の安全保障上の脅威となる。
トランプ氏、大統領令でブロードコムによる米クアルコム買収を阻止

BroadcomはQualcommを買収後も5Gの先行開発や軍事関連事業を他社に売却しないと米議会に誓約していました。
しかしこんな誓約は、ダチョウ倶楽部の「押すなよ?絶対に押すなよ?」という前フリくらいの効果しかありませんでした。
事業売却をしなくても、技術流出の手段はいくらでもあります。
「BroadcomはHuweiとつながっている」と米国に断定された時点で、Qualcomm買収はゲームオーバーでした。

Qualcommは国家なり

もうひとつのポイントが
「Qualcommが米国の安全保障を担っている」
ということです。

Qualcommはご存知の通りCDMA特許で急成長した企業です。
そもそも軍需技術の民間転用とプロパテント政策に支えられたアメリカの産業政策の申し子でした。
3GからLTEになる過程で、ビジネスモデルを特許ライセンス一本槍からスマホ用高性能プロセッサメーカーへと転換し、中国政府とも歩み寄るなど、政治色が薄れてきた印象がありました。
もちろん相変わらず国防高等研究計画局(DAPRA)の先行開発プロジェクトも受注していました。
今回の大統領令によって、Qualcommと軍需産業の結びつきが今も色濃く残っていることを明らかにしました。

Qualcommについてはこのへんの記事で詳しく書いています。
クアルコムがスマホ独占できた秘密 - おばかさんよね。
Snapdragonの誕生からマンネリ化まで - おばかさんよね。
これは酷い…Qualcommが要求するライセンス契約の実態 - おばかさんよね。

米国のダブルスタンダード

3つめのポイントが
「米国のジャイアニズム」
です。
「お前(日本)のモノは俺(米国)のモノ、俺のモノは俺のモノ」
ということです。

日本市場に参入する時は「自由貿易」という正義を振りかざし、
買収で技術流出の恐れがあるときは「安全保障」で守りにかかる。
このダブルスタンダードが米国のやり方です。
こいつを抑えておくと、トランプ政権の力学が理解しやすくなります。

米国企業が外交圧力で日本市場に参入し、ついには電電ファミリーを駆逐した歴史はこちらの記事をどうぞ。
日本の2G(第二世代移動通信)の歴史 - おばかさんよね。
アナログ携帯電話(1G)におけるMotorolaの日本参入工作 - おばかさんよね。

参考:
クアルコム買収禁止 安保が理由の違和感 (写真=AP) :日本経済新聞 2018/3/14

日本脱出だよね

Qualcomm、Broadcomm、Huaweiの動向が気になるところですが、
最後に日本市場と日本企業に視点を移してみます。

米国ではHuaweiとZTEの通信インフラ(基地局など)に規制勧告されていますが、日本は野放図です。
電電ファミリーで利権を囲うことには反対ですが、
「レッセ・フェール」を掲げるとか、もっと気骨ある思想を見せてほしいもんですたい。
衆議院議員松平浩一君提出米国情報機関高官により米国民に対しHuawei社とZTE社の通信機器を使用しないよう勧告がなされたことに関する質問に対する答弁書

無線通信は、ガンダムのアナハイム社みたいな軍産複合体が活躍する特殊なハイテク産業です。
米国ならQualcomm、IBM、中国ならHuaweiがキープレイヤです。

日本なら三菱?NEC?
うーん、どうもパッとしません。
こうなったら自己防衛おじさんの言うとおり
「投資して日本脱出だよね」