おばかさんよね。

【実録】ビットコインでポリス沙汰

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このところ、日本でも仮想通貨の注目度が高まっています。
非常に激しい値動きをしており、取引所間の価格差に着目した鞘取り(アービトラージ)で儲ける手法も話題になりました。

マイニングやアービトラージなど様々な利殖情報が飛び交っていますが、うかつに手を出すと火傷しますよ、という小噺です。
(実話をもとにしたフィクションです。)

小噺「ビットコインでポリス沙汰」

プロローグ

ビットコインが一時200万円を超えたというニュースを聞き、
ここが一番天井になると予想した個人投資家のエヌ氏は
保有するビットコインを一部売却することにした。

エヌ氏はビットコインをbitFlyerという取引所に預けていた。
bitFlyerは、三菱東京UFJキャピタルや三井住友海上キャピタルなど名だたる企業が出資しており、資本のバックボーンが圧倒的に信頼できたからだ。

鞘取り

しかし売却する段になると、bitFlyerはスプレッド(取引所の手数料)が高いことが気に食わない。
それなりにまとまった金額を売却するので、たかが数%といえど馬鹿にできない。

そこでエヌ氏はヤフオクを使う妙案を思いついた。
ヤフオクでビットコインを出品し、市場価格よりわずかに安い価格を設定する。
ようは相対取引でスプレット分の利ザヤを抜くのだ。

規約上、ヤフオクにビットコインを直接出品することはできない。
しかし出品説明でそれとなく匂わせれば、利にさとい連中には十分伝わる。

相手からの入金を確認してからビットコインを送信すれば良いので、ビットコインを持ち逃げされるリスクもない。
エヌ氏は現代の錬金術を編み出した気分になった。

宴の終わり

転機は唐突に訪れた。

ある日の昼、エヌ氏の電話が鳴った。
「突然のお電話すみません。わたくし、東京中央銀行 金融犯罪対策室の者です。」
東京中央銀行といえばエヌ氏のメインバンクだ。
「振り込め詐欺の被害金がエヌさんの口座に振り込まれています。
 警察の指示によりエヌさんの口座を凍結しました。」
まったく身に覚えがない話にエヌ氏は困惑した。

「いったいどういうことですか?」
「当行が確認した資金経路上、エヌさんは振り込め詐欺の容疑者ということになります。」
つまりはこういうことだ。
エヌ氏がビットコインの代金として受け取った金は、振り込め詐欺師がお年寄りを騙して入金させた金だったのだ。

「警察から指示がないかぎり、口座凍結は解除できません。
 あとは警察と連絡してください。警察の問い合わせ先は……」
行員はマニュアルを無機質に読み上げるだけだった。

警視庁サイバー犯罪対策課

行員から紹介された連絡先は警視庁サイバー犯罪対策課。
汗ばむ手でiPhoneを握りしめ、電話をかけた。
担当者は予想外に気さくな人物だった。
ネット用語にも詳しく、事情をすぐに飲み込んでくれた。
「なるほど、エヌさんも被害者みたいなものですね。
 調書取らしてもらうので時間あるときに署まで来てください。
 銀行には凍結解除の連絡しておきますので安心してください。」

後日、エヌ氏は警視庁で供述調書にサインし、晴れて無罪の身となった。
『ビットコインでポリス沙汰なう。あわや、おロープ頂戴でマジ卍。』
と自嘲ツイートするエヌ氏だったが、事件はこれだけでは収まらなかった。

組み戻しか、死か

口座凍結解除を待つエヌ氏のもとにようやく銀行から連絡がきた。
「まずは組み戻し手続きをしてください。
 組み戻し完了後、口座凍結を解除します」
「え?組み戻しが必要なのですか?」
「当たり前ですよ。振り込め詐欺で騙し取られたお金ですから。」
終始、上から物を言う行員を苛だたしく感じつつ、エヌ氏は反論する。
「ビットコインの対価として受け取った金です。振り込め詐欺の被害者に返還する義務はないと警察にも確認しています。組み戻しするつもりはありません。」
「エヌさんのご意見は関係ありません。当行の決まりです。
 組み戻しに応じて頂けない場合は、エヌさんの口座は強制解約します。
 また、エヌさんの情報を当行の管理リストに追加します。」
「管理リストとは何ですか?」
「コンプライアンス上、問題があった顧客情報を管理するリストです。
 リストに載ると、当行やグループ企業と一切の金融取引ができなくなります。」
行員はブラックリストに載せることを匂わせている。
ブラックリスト入りとなれば、クレジットカードや住宅ローンも使えなくなる。
エヌ氏は反論をあきらめ、組み戻し同意書にゆっくりと捺印した。

初心忘るべからず

エヌ氏が初めてビットコインを購入したのは2014年。
マウントゴックス事件でビットコインが急落していたころだった。
「落ちてるナイフをつかむな」という相場格言に背き、
ジェットコースターに飛び乗ったのにはエヌ氏なりの信念があった。

エヌ氏の信念とは、例えるならチェ・ゲバラのTシャツを買うノリと同じだ。
ビットコインは世界に革命を起こす技術になる。
踊る阿保に見る阿保、同じ阿保なら踊らにゃ損損。

ビットコインとはP2Pネットワークで維持される非中央集権的な社会実験だ。
ポストモダン思想にかぶれた学生時代を過ごしたエヌ氏にとって、ビットコインを保有することは甘酸っぱいアンガージュマンに他ならない。

ドゥルーズ=ガタリといくら格闘してもちんぷんかんぷん。
結局、浅田彰の「構造と力」に頼って、シラケつつノり、ノりつつシラケることしかできなかった。

仮想通貨の革命性に魅了されたエヌ氏はここぞとばかりにアンガジェした。
買い集めたビットコインをソーシャルレンディングで運用したり、ASICマイニングに挑戦したりと、のめり込んでいった。

MtGOXで中座した仮想通貨革命はいま再び軌道に乗り始めている。
ビットコインの通用力はまだまだフィアットマネーに及ばないが、
エヌ氏の革命闘争は勝利で終わったといって良いだろう。
売却益なぞあぶく銭に過ぎない。

しかしながら、エヌ氏の高邁な精神はビットコインの高騰でよどんでしまった。
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ。

解説

いかがだったでしょうか?
ビットコイン投資で気をつけたいポイントをおさらいします。

ビットコインの相対取引はハイリスク

手数料をケチりたい、取引所への身分証登録が煩わしいなどの事情から、ユーザ同士で直接取引したいニーズもあると思います。

いわゆるビットコインの相対取引するサービスとしてLocalBitcoins.comが有名です。
以前はZaifもスマートATMという類似サービスを展開していました。
その他、ヤフオクやメルカリなどのネットオークションや掲示板で取引相手を募ることもできます。

しかしビットコインのように換金性が高い商品を相対取引するのはハイリスク過ぎます。
買うのも売るのもおすすめしません。
資金洗浄や振り込め詐欺等の金融犯罪に巻き込まれる危険があります。
そうなったらマジで洒落になりません。

ちょっと面倒でも信頼できる取引所を使うべきです。
Zaif、Coincheck、GMOコイン等、国内有名所の取引所を試しましたが、個人的にはbitFlyer一択です。
手数料が割高ですが、安定感があります。
bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

善意取得は通用しない

ビットコインの対価として振り込まれた代金が振り込め詐欺によるものだった場合、振り込め詐欺被害者への組み戻しが実質強制されます。
民法192条(善意取得)でゴネても無駄です。
形式上は任意の組み戻しです。
ブラックリスト等、組み戻しに応じない場合の懲罰的措置はコンプライアンスの範疇です。

民法192条(善意取得)といえば「難波金融伝の言われなき借金」

万が一のリスクヘッジとして、仮想通貨取引用には解約されても痛くもかゆくもない口座(地方銀行、信用金庫、ネット銀行の類)を使うというのも一案です。
逆にメガバンクはおすすめしません。
三菱東京UFJ銀行とトラブルを起こすと、三菱系のあらゆる金融サービスに影響が及びます。

組み戻しの仕組みを逆手に取れば、振り込め詐欺なり不正アクセスなりを自演することも理屈上は可能です。
2回も続いたら怪しまれますが、ひょっとすると1回くらいなら・・・

ビットコインは金融犯罪に最適な通貨

ビットコインは金融犯罪に都合が良い通貨です。
足がつかないし、不正を取り締まる行政機関もありません。

金融犯罪のリスクがある。値動きが激しい。送金手数料が高い。
仮想通貨といえばビットコインが一番有名ですが、通貨としては不都合なのが実態です。

ビットコインの思想的支柱

ドゥルーズ=ガタリが何を言っているのか、理解不能。

シラケつつノり、ノりつつシラケる。

手軽にさくっと本質つかむなら。

てなこと、忘れて踊ろじゃないか。そそい、それ〜。

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