米国民の本音「トランプ関税は国益にかなう」
トランプ関税は自由貿易の理念に反するという批判的な論調が主流です。
しかしジム・クレイマー氏はトランプ関税を肯定する考えを主張しました。
ジム・クレイマー氏はハーバード大卒、元ゴールドマン・サックスのトレーダーというゴリゴリの金融インテリで、国際貿易論も当然理解しています。
だからこそ、ジム・クレイマーのトランプ関税肯定論は一考の価値があります。
「鉄鋼・アルミ関税は貿易戦争の始まりではなく、終わりだ。」
という主張は逆説的にみえて、
じつはトランプ政権を支持する大多数の米国民の本音をつかんでいます。
Twitterでもジム・クレイマー氏の主張を支持する声が多く見つかりました。
thank you! It is a lot clearer when your Dad loses his income because he and others were sacrificed on the altar of Gillette. I wish the elites knew poverty.. https://t.co/8LljFX5mHb
— Jim Cramer (@jimcramer) March 3, 2018
3月2日放送のMad Moneyでジム・クレイマー氏が語った内容を超訳で紹介します。
目次
「自由貿易」教の幻想
「自由貿易が正しくて、保護主義は間違っている。」
こんな考えが米国のエコノミスト、政治家、実業家の主流派です。
はっきり言って自由貿易なんて幻想で、宗教的な信念に過ぎません。
いわば自由貿易教のために、米国経済は莫大なお布施をしてきました。
トランプ関税は貿易戦争の始まりではありません。
むしろ、ずっと前から起きていた貿易摩擦を終わらせる手段なのです。
けっしてグローバル化や国際貿易に反対しているわけではありません。
ただ、なんでもかんでも自由貿易を善しとするのは間違っています。
報復措置はあるか?
「トランプ関税に抗議する中国が報復措置を仕掛けてくる」
と警戒するインテリさんの話を耳にタコができるくらい聞きました。
インテリのお説教にだまされないで、現実をみてください。
百円ショップは中国製品であふれています。
中国製品は「安さ」が売りです。
マジで貿易戦争になったら、米国より中国のほうがずっと深刻なダメージをくらいます。
報復措置はハッタリ
「報復措置を心配しなくてよい」というのは全然おかしな話ではありません。
その証拠に欧州各国(EU)の反応をみてください。
EUはトランプ関税に抗議する報復措置として、米国産のジーンズ、バーボン・ウィスキー、ハーレー・ダビットソン(バイク)に関税を検討してると脅してきました。
ジーパン、バーボン、ハーレーですよ?もう、どんだけぇ〜。
やりたきゃ、やればって感じだよね。
ハーレーやアパレルの個別銘柄の株価は下がるでしょうが、米国経済に与える影響はほとんどありません。
欧州の報復措置はハッタリです。
わざと経済にダメージがなく、それでいてアメリカンなシンボルを選んでいるのです。
米国の鉄鋼産業はもう限界だ
自由貿易を推進したせいで、割りを食ってきたのが鉄鋼産業です。
米国の鉄鋼メーカー大手ニューコア(Nucor, NUE)は革新的で高効率な製鉄技術を持つ超優良企業です。
(※注:ジム・クレイマーもニューコア株を保有)
超優良企業にもかかわず、ニューコアは業績予想を下回ることが何度もありました。
なぜか?
中国がダンピングしているからです!
中国政府は雇用創出のために自国の鉄鋼産業に多額の補助金を出しています。
政府の補助金のおかげで、中国企業は製造原価より安い値段で鉄鋼を輸出しています。
米国の鉄鋼産業は中国のダンピング攻撃により、もはや壊滅寸前です。
ニューコアやUSスチール(United States Steel Corp., NYSE:X)といった超優良企業以外は淘汰され、貴重な雇用も失われました。
消費者への影響は大したことない
テレビや新聞のインテリたちは
「関税は結局、消費者が負担することになる」
と脅します。
関税で自動車の価格がざっくり1万円値上げされるとしましょう。
自動車は数百万円しますから、こんなの大した影響ありません。
消費者への影響はともかく、トランプ関税でダメージを受ける産業があるのは事実です。
鉄鋼やアルミを大量に使うボーイング(Boeing, BOE)がその典型です。
関税の影響はトレードオフ
自由貿易を信奉してきた米国は鉄鋼産業の雇用を犠牲にし、そのかわりに中国への紙オムツやタービン・エンジンの輸出を促進してきました。
P&GやGEの業績推移をみれば明らかでしょう。
トランプ関税は米国民のコンセンサス
トランプ関税が導入されたら、株式相場はどうなるか?
間違いなく一時的には下落するでしょう。
でもトランプ関税は米国民のコンセンサスです。
大統領選挙のときから貿易問題が焦点でした。
あなたがトランプ大統領を好きだろうと嫌いだろうと、
「ボーイングの業績か、鉄鋼産業の雇用確保か?」
というトレードオフ問題について、
トランプ大統領が当選した時点で答えは決まっているのです。
戦車に中国の鉄を使えますか?
MADE IN USAの鉄が必要不可欠でしょう。
トランプ関税は米国の国益にかなうと多くの人が考えています。
株式相場のパニックを買い時として利用してください。
マーケットが自由貿易教のドグマから目が覚めれば、相場は再び上昇に転じます。
参考:
Cramer parses the numbers behind Trump's steel and aluminum tariffs
あるばかの感想
中国が鉄鋼ダンピングしてるのは事実でしょう。
だから米国が保護関税を導入するという理屈は分かります。
でもこれって、アメリカお得意のダブルスタンダードのロジックです。
自由貿易とダンピングを都合が良く使い分けてるだけです。
中国がヨーロッパと同じ手ぬるい報復措置しか返さないだろうという予想が楽観的すぎて怖いです。
日米貿易摩擦と同じノリで解決できると思っているのかもしれません。
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たしかに関税合戦になったら、米国より中国のほうが経済的損失は多いでしょう。
でも貿易摩擦は経済だけでなく、政治の問題でもあります。
属国の日本ならアメリカ様の言いなりですが、中国は喧嘩上等で勝負してくる可能性だってあります。
いまのところ、中国はヨーロッパと足並みをそろえる方針を示しています。
トランプ関税への対抗措置がジーパン、バーボン、ハーレーへの関税というスケープゴートで決着するのか?
注目です。