おばかさんよね。

日本の自動車産業がトランプから叩かれる理由

公開日:  更新日: 2017/10/08

はてブをダラダラ見ていたら、ちきりんが面白い問題提起をしていた。

トランプ大統領の「アメリカで売る自動車はもっとアメリカで作れ!」という浅はかなポピュリズム政策だが、意外と理論的な正当性があるのでは?という仮説だ。

ちきりんの問題提起を考えてみた。

「日本車は現地生産が進んでいる」は本当か?

日本車は現地生産が進んでいる、トランプの日本車叩きは的外れ」という論調をマスコミではよく書かれている。

日本車たたき、今さら? トランプ氏、80年代の対日観:朝日新聞デジタル
「トランプは80年代の思い込みを引きずってるだけだろ」論調

これって本当?

ちきりんの仮説

ちきりん仮説の要点はこんな感じ。

  • トランプ大統領の主張は論理的には正しい。
    • アメリカは外国から自動車を輸入しすぎている。もっとアメリカで生産すべき
    • 逆に日本は自動車を輸出しすぎている。もっとアメリカで現地生産すべき。

Chikirinの日記
はてブコメントが非公開なのよね。

前提:もちろんバズ狙いのアジテーション

もちろんバズ狙いのアジテーション。マジにしないでよ、そんじゃーね、ってノリでよろ。

でも、面白い視点だと思ったのでパパっと視点・論点を整理してみた。

仮説:米国の雇用を奪った犯人は日本の自動車産業

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日本の学校教育&マスコミに浸った感覚からすると、トランプ大統領の主張は言いがかりに聞こえる。

だって日本の自動車産業は日米貿易摩擦と円高不況以降、現地生産が進んでいると教わっているから。

しかし、だ。合理主義を重んじるUSAだからそれなりに理由はあるはず。

いまだに日本の自動車産業は米国の雇用を奪っている主犯だという説も成り立つのではないか?

根拠:日本車は現地生産比率が世界一低い

日本の自動車産業は米国の外交圧力に屈して現地生産をさせられた!というマスコミのバイアスを捨て、統計データからゼロベースで検証してみる。

食料自給率と同じ考え方をすると自動車の自給率は「国内の生産台数」対「国内の販売台数」の比率で求められる。

国内販売台数よりも国内生産台数の比率が高い=国内自動車メーカーは現地生産比率が低い、ということの裏付けになる。

この指標でみると、世界で一番現地生産比率が低いのが日本。年間500万台の国内市場に対し、年間900万台の自動車を生産=400万台を輸出。

逆にアメリカは販売台数1700万台に対し生産台数1200万台、500万台を輸入している。

日本に都合のよいデータだけじゃなくて、都合が悪いデータも直視しないとグローバルスタンダードで議論はできないよ、そんじゃーね。

反論

ちきりん仮説の反論をまとめてみた。

どの反論も「一理ある、しかし・・・」、「半分正解で半分間違い」といった感じ。真面目に考えると根が深い問題だお。

自由競争だ。貿易不均衡で何が悪い?

はてな匿名ダイアリー(通称:増田)の記事。

ちきりん「日本の自動車産業が直視すべき現実 」の誤り
秒速でレスポンス。すげえ。

日本の自動車輸出が多いのは自由競争の結果。それぞれの国が比較優位のある産業に特化することで国際貿易がWIN-WINの関係になる。

日本が自動車を輸出し、米国が牛肉・オレンジを輸出する、とか。

ちきりんブロクは初心者向けの解説記事という建前ながら(おそらく意図的に)比較優位の概念に触れていないので、増田のツッコミも百理ある!

でも残念ながら論点がズレている

トランプ政策の論点は通商政策比較優位は百も承知で、国内雇用を守るというダブルスタンダードなのだから。

日本の自動車産業を守ろうとしてトランプ政策に反論するには「日本車よりもドイツ車のほうが米国の雇用を奪っている」というロジックが必要になる。

日本車よりドイツ車のほうが凶悪(なのか?)

米国はどこから自動車を輸入しているのか、国別のデータを調べる必要がある。

じつは日本から米国への輸出は160万台程度しかない。ドイツやフランスのほうが多い可能性がある。

だから日本は問題ないかというと、そうはいかない。

まずドイツやフランスの自動車メーカーの輸出は欧州市場向けが多い。EUという観点でみたら自給自足

日系自動車メーカーは、メキシコ生産の北米仕向けや東南アジア現地生産など、いわゆるOUT-OUT(外-外)の領域でも稼いでいる。

ここを米国から叩かれると弱いところ。米国製自動車部品の採用比率を高めたり、日本国内市場では米国車にエコカー補助金を盛るなど、上納金で政治決着せざるを得ないのかもしれない。

ちきりん女史の自動車業界に関する微妙ネタについて
すかさず刀を抜く切り込み隊長

結論:政治決着しかない

日本の自動車産業はグローバル競争力が強いので、米国の雇用を奪っているのは紛れもない事実。

そもそも国際貿易は持ちつ持たれつの関係。しかも自動車産業だけを槍玉にあげるのはフェアではないが、市場分野別個別協議(MOSS)の論点に持ち込まれると日本は不利だろう。

これって政治決着で折り合いつけるしかないわけで、米国に政治的・経済的・文化的に依存する日本にとってトランプ政策はかなり危険だと思う。

そんじゃーね。