突っ込みどころ満載の半導体ベンチャー「Techpoint」のIPO初値を大胆予想
こんにちは。
投資ブログ界のハイテク銘柄担当、あるばかです。
半導体ベンチャー「Techpoint Inc.(テックポイント・インク)」が9月29日に東証マザーズに上場予定です。
ちょいと調べてみたら突込みどころ満載だったので、個人的に気になったところを書き連ねてみます。
上場ゴールに警戒
目次
テックポイントとは?
概要
- 2012年4月に設立。本拠地はシリコンバレー(米国カリフォルニア州サンノゼ)
- CEOは小里文宏氏
- 監視カメラ、車載カメラ向けビデオデコーダ・ビデオエンコーダが主力製品
小里文宏氏の華麗なる経歴
- リコーのシリコンバレー駐在経験が起業のきっかけ
- 1995年、半導体ベンチャー「Sigmax Technology(シグマックス)」に社長として参画。CD-ROM制御ICの開発を手がける。
- 1996年、Sigmax社をAdaptec社に売却。
- 1997年、Techwell(テックウェル)を創業。監視カメラ、車載カメラ向けビデオデコーダー・ビデオエンコーダが主力製品。
- 2010年、Techwell社をIntersil(インターシル)社に4億5500万米ドルで売却
- 2012年、Techpointを創業
シリコンバレーでリッチになるには | 東洋経済オンライン
いい具合に本音を引き出している良記事。
企業情報 - 役員紹介 | Techpoint
ボードメンバーは豪華な顔ぶれ。Techwell時代からのメンバーもずらりと。
競業避止義務は大丈夫なの?
まず気になったのが「競業避止義務」です。
Intersilに買収されたTechwellとTechpointは事業分野がもろかぶりです。
事業分野が同じどころか、開発している製品も同じです。
Techpointは同軸ケーブルで4k/フルHD映像をアナログ伝送する「HD-TVI」を売りにしていますが、ほぼ似た製品(HD-SDIやSLOC)をIntersilもリリースしています。
TechpointのHD-TVI技術はTechwell時代のNTSCビデオデコーダ、ビデオエンコーダから発展したと思われます。
社名も似ているし、まさか競業避止義務に違反しているなんて、ありえないはずです。
頑張って調べたのですが、TechpointとTechwell売却に伴うIP(知的財産)関連の情報は見つかりませんでした。
2017年にルネサスがIntersilを買収したタイミングで、IPを買い戻したのでしょうか。
うーん、どうもすっきりしません。
Techwellと思われる技術
Intersil MediaRoom - 既存の同軸ケーブル上でアナログからHDビデオ方式への切り替えを可能にするHD-SDIトランスミッタとレシーバを発表
ソニーの「ハイブリッド・カメラ」はインターシルのSLOC(Security Link over Coax)という技術を採用したICチップを搭載
日本で上場する理由が怪しい
小里文宏氏はTechpoint社を日本で上場する理由として、自動車市場でのビジネスを挙げています。
車載カメラで勝ち目がないことについて、Techpointは百も承知のはずですが・・・
――日本上場を決めた理由は。
「日本は自動車生産大国だ。
その大きな市場でビジネスを行いたい。
また、日本の優秀な半導体エンジニアを獲得するためには、
日本での知名度を上げる必要がある。
半導体ビジネスの活性化に貢献したいという思いもある」
日経:テックポイント・インクの小里文宏社長「JDR第1号、技術者の確保につなげたい」 より
HD-TVIのようなアナログ伝送方式のビデオデコーダー・ビデオエンコーダがいまさら車載カメラで売れるとは思えません。
車載カメラのビデオ伝送インタフェースはデジタル化された高速シリアル通信が主流です。
Techpointの HD-TVI規格は監視カメラのように配線が長く、しかも既存設備を流用したい用途では画期的な技術です。
しかし車載カメラのようにせいぜい数10mくらいの配線なら、デジタル方式でも問題ありません。
映像の遅延、コスト、高解像度対応、ノイズ対策、信頼性などなども、最新の高速シリアル・インタフェースと比較して、TechpointのHD-TVIに優位性があるようには見えません。
強いて言えば4k対応ですが、果たして必要なのでしょうか?
車載カメラの高速シリアル通信
自動運転時代の車載カメラは高速シリアル通信が主流です。
Ethernet AVB、TIのFPD-Linkなど各種規格が乱立してますが、MAXIMのGMSLが一歩リードしているように見えます。
車載半導体:「同軸ケーブル対応SERDESが最適解」、マキシムが車両内の映像データ伝送で提案 - MONOist(モノイスト)
MAXIMのGMSLは同軸・電源重畳対応、非圧縮・低遅延、低コストが売り。
ADASサラウンドビューキット | ルネサス エレクトロニクス
MaximとNVIDIA、車載インフォテイメントおよび自動運転ソリューション向けのDRIVE CXおよびPXプラットフォームでコラボレーション - マキシム
MAXIMのGMSLは NVIDIAやルネサスのSoCとも提携。
結論
ビデオ処理系にスゴい技術があり、しかも中国市場に販路を持っているので、爆発的な成長も期待できます。
しかし、テックウェルとの知財関係、日本で上場する理由、車載市場の戦略など、疑問が残りすぎます。
このあたりを放置したままのアナリスト予想に何の価値がありましょうか。
どなたか事情通の方がいらしたら、教えてください。
今回はノーマネーでフィニッシュです。