テスラが自動運転の元責任者を提訴した理由
テスラは自動運転技術の中心メンバーだった元従業員、スターリング・アンダーソン氏を提訴した。
スターリング・アンダーソン氏はテスラから自動運転の機密情報を持ち出し、人材引き抜きを企てたという。
うーん・・・テスラがすかさず提訴したのは自信のなさの現れか?
「ルーシッド」や「ファラデー」など、テスラからスピンオフしたEVベンチャーは以前からあったが、テスラは横綱相撲をとっていたように思う。
自動運転だけ敏感に訴訟沙汰になるのが気になったので、深読みしてみた。
目次
訴訟の概要
2017年1月26日、テスラ・モーターズ(Tesla motors)は元従業員のスターリング・アンダーソン(Sterling Anderson)氏とそのパートナーであるクリス・アームソン(Chris Urmson)氏、そして自動運転のベンチャー「オーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)」社をカリフォルニア州裁判所に提訴した。
Tesla Motors v. Anderson; Urmson; Aurora Innovation, LLC | Tesla Motors | Autonomous Car
テスラの訴状原文
機密情報の持ち出しと人材引き抜き
テスラの訴状によると、スターリング・アンダーソン氏はテスラ退社後、Googleを退社したクリス・アームソン氏と協力し、2016年夏から新たな自動運転「オーロラ・プロジェクト」の事業化に取り組んでいた。
そして「オーロラ・プロジェクト」で利用するため、数百GBにおよぶテスラの自動運転の機密情報を東芝製ホータブルハードディスクにコピーして持ち出したという。
また、テスラから人材引き抜きを画策したという。
スターリング・アンダーソン
スターリング・アンダーソン氏はテスラの自動運転技術「オートパイロット(Auto Pilot)」の元・開発責任者(ディレクター)。
ブルームバーグによると、スターリング・アンダーソン氏は2015年11月以降にテスラを退社したと報じられた。テスラの訴状にもスターリング・アンダーソン氏が2015年12月上旬に退職意志を伝えたとある。
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アップルから新任者を引き抜き、返す刀で前任者を提訴。怖い・・・
クリス・アームソン
クリス・アームソン氏はGoogleの自動運転車開発プロジェクトの技術責任者。
2016年8月ごろにGoogleを退社したと報じられた。
深読み
機密情報をHDDにコピーして持ち出したのが事実なら完全にOUT事案だが・・・
今回の訴訟はたんなる競業避止義務違反というより、自動運転技術のスピンオフ許すまじというテスラの意志を感じるような気がする。
自動運転は真似されやすい技術、テスラは先行者利益の確保に必死
テスラの自動運転は非常に真似されやすい技術だと思われる。
NVIDIAのDRIVE PX2プラットフォームを利用すれば、誰でも完全自動運転車を開発できる環境が整っている。
しかし、NVIDIAが素晴らしい技術を提供しても、大手自動車メーカーは安全性検証に数年以上の長い時間を費やすため、市場投入まで時間がかかる。
そこでテスラは「自動運転モードで事故が起きたらユーザー責任でよろ」というベンチャー特有の開き直り姿勢で、先行逃げ切りを狙っているのだろう。
つまり、テスラが最も恐れているのはスピード感を持った自動運転のベンチャーが登場すること。
テスラはNVIDIAのDRIVE PX2の採用ノウハウは非常に短い賞味期限だと自覚しているからこそ、スピンオフを警戒しているのではないか。
これまでテスラをスピンオフした「ファラデー」や「ルーシッド」は資金力や開発リソースが乏しく、マッスルEVの開発に集中してきた。
後発EVベンチャーがNVIDIA DRIVE PX2を導入するのには相応の資金とリソースが必要になるが、テスラからスピンオフしたオーロラ・プロジェクト社が導入ノウハウを提供したら、最後の参入障壁も崩れてしまうだろう。
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人材引き抜きは業界の慣習
シリコンバレーの自動運転の開発競争では人材引き抜きは日常茶飯事だから、なんだかテスラの提訴は過剰反応に感じる。
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今後の展開から目が離せませんね。