リチウムイオン電池、日本企業は素材で勝負
リチウムイオン電池市場は韓国・中国勢の過剰な設備投資で価格競争に陥りつつある。
さて、劣勢の日本企業が生き残るには?
素材分野の研究開発も有望な手段に思える。
いったんコア技術を確率できれば比較的、参入障壁が高い領域だからだ。
リチウムイオン電池の素材関連のニュースをまとめてみた。
安永は正極材の加工技術で電池寿命を12倍向上
11月22日の報道後、安永の株価は80%近く高騰した。地味な自動車部品メーカーに投機的な期待が一気に集まった。しかし…
この技術はリン酸鉄リチウム(LiFePO4, LFP)で特に有効とのこと。しかしLFPは時代遅れの技術。世界的な主流は三元系。LFPは性能が劣るし、特許がややこしい。
LFPはBYDやa123など中国企業が注力していくと見られる。中国政府はEV、特に電気バス向けで多額の補助金を出している。
安永はこの技術を特許出願中。人材の引き抜き対策や知財戦略など中小企業には難しい課題が山積みだが、大丈夫だろうか。特許使用料を取りっぱぐれないことを祈りたい。
東レはグラフェンで出力強化
11月25日、東レは多層グラフェンを正極の一部に使うことで出力密度を約2倍に高める素材を開発したと発表した。
ドーパミンを用いた独自の表面処理によりグラフェンの凝集を防ぐことに成功した。
量産目標は2019年。2020年ごろに売上数十億円、さらに数年後には売上数百億円を目指す。中国のEV市場も狙うと東レはコメントしている。
トヨタはリチウムイオンの観察に成功
11月24日、トヨタはラミネートセルを分解せずにセル内部のリチウムイオン濃度を観察することに世界で初めて成功したと発表した。
観察結果を活用することで、EVの航続距離の10%程度の向上、バッテリーの高寿命化、電池開発のスピードアップが図れる。この技術は数年後の実用化を目指している。
トヨタはEV開発の社内ベンチャーを発足
11月14日、トヨタはEVを開発する新組織 EV事業企画室を発表した。社内ベンチャー的な運営で意思決定を迅速化する。グループのデンソー、アイシン精機、豊田自動織機からそれぞれ1人を募り、4人の精鋭で構成する異色の組織だ。
トヨタは11月8日の決算発表でこれまで慎重だったEV投入を表面。FCV、PHV、HVにEVも加えた全方位戦略を展開する。