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Qualcomm

いよいよ年貢の納め時か?独禁法違反の指摘が相次ぐQualcomm

2017/01/14

taiho
2015年に中国で罰金支払いと契約見直し合意して以降、ふたたびQualcommを独禁法違反で訴求する動きが強まってきた。

2009年にも韓国と日本で独禁法違反を指摘されながらも、水面下の交渉でライセンス契約を守り抜いたQualcommだが、いよいよ年貢の納め時が近づいているようだ。

中国、韓国、欧州での2015年以降の動向をまとめてみた。

中国(2015年2月和解)

2015年2月9日、中国でも独占禁止法違反で調査を受けていたQualcommは規制当局と和解を発表した。

規制当局=中国の公正取引委員会にあたる組織が国家発展改革委員会(NDRC, National Development and Reform Commision)

和解内容

Qualcommと国家発展改革委員会の和解内容は以下。

  • 罰金として約9億8千万ドルを支払う
    • 中国独占禁止法(AML法)に違反したと認定
    • 2013年度の中国市場での売上高8%にあたる制裁金として60億8800万元(≒約9.8億ドル)
  • 包括契約(comprehensive licensing package)の禁止
    • 特許リストを提供し、期限切れ特許に対する費用を徴収しない
    • 無線通信と関係ない特許の抱合せ販売を禁止
    • 3G(WCDMA/CDMA2000)と4G(LTE)の契約を分けること
  • ロイヤリティの値下げ
    • 3Gのロイヤリティ料率は5%
    • 4Gのロイヤリティ料率は3.5%に引き下げ
    • 3G/4G両対応モデルのロイヤリティ料率は5%
    • ロイヤリティ算出基準価格は携帯端末の卸売価格の100%から65%に減額
  • 俺様パテント・プールの禁止。ライセンシーが保有する特許について無償でのサブライセンス付グラントバック要求を撤廃する。サブライセンスには対価を支払うこと。
  • 不合理な販売条件の撤廃。ライセンス契約に訴訟しない合意をベースバンドチップの販売条件とすることを禁止。
  • 見直し後の新しい契約条件は中国向けデバイスにのみ適用する
  • (中国の)既存顧客とも契約条件の見直しを行う

2015年3月:公正取引委員会
抄訳
国家发展和改革委员会行政处罚决定书[2015]1号
中国語原文、英文版なし
Qualcommプレスリリース
ニュース - Qualcomm、罰金9億7500万ドルで中国独占禁止当局と和解:ITpro
罰金が10億ドルを超えるとの見方 …
ニュース - 中国当局がQualcommを「市場独占」と判断、制裁金を科されるおそれ:ITpro
解説記事
中国の独禁法当局が日本企業を次々摘発、その予防のためには - 法と経済のジャーナル Asahi Judiciary
詳細な解説

ポイント

国家発展改革委員会の決定は2009年当時の韓国や日本の公正取引委員会よりはるかに厳しい条件だが、Qualcommが上訴せずに和解に応じたことは特筆すべきポイント。

これまでQualcommはFRAND条件にも独占禁止法にも違反しないと強弁してきたが、いよいよ旗色が悪くなってきたと判断したのではないか。**アメリカ政府から通商圧力をかけられる韓国や日本と違い、中国当局が相手では勝ち目がない。

今後の影響

中国での和解がスマホ業界に及ぼす影響を短期・中期・長期のタイムスパンに分けて予想してみた。

短期的影響

ロイヤリティ値下げにより、Huawei(華為, ファーウェイ)やZTE(中興)、Xiaomi(小米、シャオミ)といった中国企業の価格競争力が有利になるだろう。

したがって、Huaweiと同じハイエンド〜ミッドレンジ端末を主力としている韓国 サムスン、LGや台湾 HTC、ASUSあたりは敏感にマイナス影響をくらうだろう。

実際、韓国 公正取引委員会(KFTC)の2016年新制裁案に少なからず影響したと思われる。

一方、Qualcommにとってメリットもある。CDMA関連で従来通りの権益が中国当局に認められたことは投資家の安心感につながった。

また、当局と折り合いがついたことで中国における契約問題の改善が期待される。ひとつの問題点はライセンス契約をしない脱法メーカーが多いこと。典型例がMeizu(魅族)。

もうひとつが出荷数量を過小報告してライセンス料をごまかす問題。Mediatekから仕入れた販売情報を駆使して不足分を請求するというシナリオも可能性ゼロではないと思う。こいつは共産党との関係次第。

中期的影響

サブライセンス付グラントバック条項が中国国内で撤廃されたことにより、中国企業の特許ライセンスビジネスが活発になると予想される。

まず心配されるのは外資企業が狙い撃ちされること。

実際、2016年5月25日にHuaweiはSamsungが無線通信のライセンス料を支払わなかったとして米国と中国で提訴している。

中国特許を多く保有する企業群が海外企業や新興企業にライセンス料をふっかけたり、訴訟の武器とすることが可能になった。

一方、海外企業が中国企業を攻撃するのは非常に難しい。海外企業の特許は相変わらずQualcommがサブライセンスを保有したままになっているからだ。

海外企業の特許はQualcomm経由で実質無償で入手し、自国の特許は海外企業には使わせない、ということになり、Qualcommの俺様パテント・プールの良いとこ取りに成功したといえる。

ちなみに中国 新聞網によると、中国国内の特許数はHuaweiが41,679件、ZTEが37,869件、Coolpad(酷派)が1,072件、Motorolaを買収したLenovoが約2000件、Appleが2,841件。それに対し新興メーカーのXiaomiは26件、OPPOは11件だという。

Samsung to countersue Huawei over patents
ASCII.jp:ファーウェイがサムスンを特許侵害で米国と中国で提訴
高通专利授权模式被打破 中国手机厂商或掀专利大战-新华网

長期的影響

建前上、FRAND条件で提供しないといけないのでライセンス契約の見直しが海外でも進む可能性が高い。

FRAND条件=Fair, Reasonable, And Non-Discriminatory(公平、合理的、かつ非差別的)のこと。WCDMAとCDMA2000を標準規格化する際にQualcommはFRAND宣言している。

中国は外資企業を狙い撃ちした制裁なので渋々合意したのだという言い訳が通用するとしても、世間の風当たりは弱まらないはず。

Qualcomm特許の影響力が弱まる4G以降はCDMAのように暴利をむさぼることはできなくなるだろう。

欧州(2015年12月〜継続中)

2015年7月16日、欧州委員会はQualcommを独禁法違反の疑いで正式調査を開始したと発表した。

欧州委員会がQualcommを独禁法違反で調査するのは2度目。前回は訴えが取り下げられたことから制裁がないまま調査終了していた。

今回はnvidiaが2011年に買収した英 Icera(アイセラ)社の申し立てが発端。

2015年12月8日、欧州委員会は下記の予備的見解を発表した。

  • Qualcommチップセットのリベートが自由競争と技術革新を阻害した。契約ではリベートはいまだに有効となっている。
  • 2009年から2011年にかけてチップセットを原価割れで販売する行為がIcera社を締め出す略奪的価格設定(predatory pricing)だと認定した。

略奪的価格設定とはダンピング(不当廉売)の一種のこと。

また、2016年4月にはnvidiaがQualcommに対してダンピングの賠償として352百万ドルの訴訟をイギリスで起こしていることが判明した。

欧州委員会、クアルコムを独禁法違反の疑いで本格調査 - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
2016年2月:公正取引委員会
Nvidia Demands Qualcomm Pay Up After Demise of $352 Million Unit - Bloomberg

韓国(2016年12月〜継続中)

2016年12月28日、韓国 公正取引委員会(KFTC)はQualcommが独占禁止法に違反したとして、韓国で過去最大規模となる課徴金1兆ウォンの支払いを命じた。

2009年のときと同様、Qualcommはすぐに反論し、控訴する方針を表明している。

KFTCが発表した声明のポイントは以下のとおり。

独禁法に違反すると指摘されたポイントは下記3点。

  • Qualcommは競合するモデムチップメーカーに対して標準必須特許のライセンスを拒否した
  • Qualcommはモデムチップと組み合わせた不公平なライセンス契約を強要した
  • 無償でのサブライセンス付グラントバックを強要した

改善命令のポイントは以下。

  • モデムチップメーカーとのライセンス交渉に真面目に応じること
  • チップと抱き合わせたライセンス契約の禁止
  • 既存顧客とのサブライセンス付グラントバック条項の見直し

また、これらの命令に応じてライセンス契約を見直すべき顧客として以下条件を明示した。

  • 韓国に本社がある企業(携帯端末メーカーおよび半導体メーカー)
  • 韓国向けに携帯端末を販売する企業
  • 上記企業にモデムチップを供給する半導体メーカー

今回の判断に至った根拠のひとつとして、KFTCは幅広い企業に聞き取り調査を実施したと述べている。名前が挙げられた調査先は韓国 Samsung、LG、米国 Apple、intel、nvidia、台湾 MediaTek、中国 Huawei、スウェーデン Nokia。

クアルコム、独禁法違反で課徴金1兆ウォン–韓国公取委 - CNET Japan
韓国公取委、米クアルコムに課徴金1千億円-Chosun online 朝鮮日報

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