おばかさんよね。

サムスン傘下の新生ハーマンの成長戦略は?

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公開日:  更新日: 2017/10/08

結論:±0、むしろマイナス

ハーマンのカーオーディオ事業からすると、サムスン傘下になるマイナス影響が大きい感じるのが本音ではないだろうか。
JBLやマークレビンソン、バング&オルフセンなどエスタブリッシュなブランドイメージは「※韓国企業に買収された」という但し書きによるイメージダウン感はぬぐえない。
そしてなによりB2Bビジネスでも特に車載機器は自動車メーカーとのすり合わせが重視されるため、欧米や日本の自動車メーカーから敬遠される要素になりうる。

ブランド戦略上、ハーマンは買収されても今までのハーマンであり続けるという企業姿勢を発信していくだろう。

アップサイドのシナリオ

サムスン傘下になることのメリットを考えてみる。
サムスンの御家芸といえばコストリーダーシップ戦略、つまり価格勝負。
トップダウンの即断即決で液晶、半導体、リチウムイオンイオン電池など電子部品業界では日本企業からシェアを根こそぎ奪うことに成功した。価格勝負ならヤマピー並に地元じゃ負け知らず。

価格勝負でメガサプライヤーに挑む

ボッシュやコンチネンタルといったメガサプライヤーが強いため、
手が出せなかった廉価ゾーンを狙いにいくことが考えられる。
特にスマホと繋がる廉価なディスプレイオーディオは大きなビジネスチャンスになるだろう。
ディスプレイオーディオは出荷台数の伸びが著しく、しかもサムスンの調達力を活かしやすい製品のはずだ。
中国やインドの新興国ビジネスでもサムスン流のアニマルスピリットがあればローカルサプライヤーに対抗できるかもしれない。

地の利を活かしアジア系・日系自動車メーカーとの取引を開拓

ハーマンは日本では高級車のオプションくらいでしか採用されていなかったが、
サムスンの地の利を活かして(過酷な出張スケジュールを組まされて)
日本、韓国、中国の自動車メーカーとの取引を開拓できる可能性が高い。

日系Tier1の対抗策

逆に言えばこれまで地の利を活かして飯を食ってきた日系Tier1メーカーはピンチかもしれない。
パナソニックのリチウムイオン電池事業が三洋電機を買収しスケールメリットを補強したように、合併が生き残る道のひとつ。そういやデンソーの富士通テン買収もあった。
そしてパナソニックがテスラと共同出資して電池工場をつくったように、
韓国企業の新規参入で市場価格の下落が確実な状況では長期契約を結ぶことも利益を守る有効手段。

開発サイクルの違いが課題

液晶や半導体でサムスンが成功したのは家電向けで開発サイクルが短かったことも大きい。
新機種に置き換わるスマートフォンと違い、開発サイクルが長い自動車では採用されてから成果(売上)が上がるまで時間がかかる。サムスンの自動車参入にかける本気度が問われるだろう。
ただ、これは逆に言えば自動車メーカーの判断も問われるポイントになる。
いちはやくiPhoneを取り扱ったソフトバンクが躍進したように、サムスンの最新機能を採用した自動車がバカ売れするシナリオもありうる。

スマホ連携は鬼門

Galaxy(サムスンのスマホ)との連携強化は鬼門。
Android autoやCarPlayなどスマホ連携機能は規格化が進んでいるため、Galaxy独自仕様をぶちあげても失敗に終わる可能性が高い。
かつてHDMIが登場した頃、ビエラリンクやらアクオスリンクやらと謳い、HDMI-CECに中途半端な独自機能を付け加えて囲い込みを目論んだ失敗事例と同じ轍を踏むことになるだろう。

参考

ハーマンは400ドルと廉価なディスプレイオーディオ「JBL Legend CP100」を2016年にアフターマーケットで発売している。Freescale i.MXプロセッサを搭載しているが、サムスン製プロセッサに置き換えるなどの動きはすぐにでも出てきそうだ。