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トヨタが開発したスマートキーボックスの衝撃を読み解く

2017/01/14

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2016年10月31日、トヨタはカーシェアリングで安全な鍵の受け渡しを可能にする「スマートキーボックス(Smart key box, SKB)」を開発したと発表した。しかもプレスリリースの翌日に記者発表を行い、トヨタのコネクテッド戦略の一例として大々的に実演してみせた。

これってタイムズのカーシェアで似たようなサービスがとっくに実現しているのに何がすごいのか?
よく調べてみると、トヨタの思い切った新戦略の具体例としてめちゃくちゃインパクトの大きい発表だった。

SKBはカーシェアの切り札

SKBはただのコンセプトアイテムではなく、Getaround社のカーシェアサービスで実用化される予定だ。
Getaraoundは米国で個人間カーシェアを展開しているベンチャー企業。
日本はUberの白タク問題でガタガタいってる状態なので、個人間カーシェアなんて夢のまた夢。ベータローンチしたとたん、なにかの法令違反で秒速逮捕、待ったなし。
そんな過激なサービス向けに専用端末を開発しただけでも衝撃だが、
なんとGetaround社にトヨタは約1000万ドルの出資もするらしい。

トヨタは静観から急進的カーシェア推進派に転向

シェアリングエコノミーがブームとなり、クルマは所有からシェアに移行するメガトレンドとはいえ、
世界的に普及するのは20年、30年さきの話。
自動車メーカーにとってカーシェアの普及は歓迎したくないトレンドだ。
とくに大衆車メーカーであるトヨタにとって販売台数はビジネスの生命線。
そのトヨタが販売台数を追わずカーシェア推進するということは、
読売新聞の発行部数公称1000万部の看板を自主的に下ろすくらいのインパクトがある。
Uberと協業するといっても車両リースする程度でカーシェア・ライドシェア業界に対して様子見なスタンスだったトヨタががっつり過激派に転向したといえる。

SKBはカーシェアの切り札

11月1日の記者発表によると
クルマの所有者が車両を改造することなく、SKBを設置するだけでスマートフォンで鍵の開閉とエンジン始動でき、カーシェアが可能になる
と説明されている。
SKBを使うと従来のカーシェアで問題になっていた、
・鍵を持ち逃げされる
・非正規の通信端末とCANがつながり、不正アクセスされる
というリスクがなくなるのがメリットだという。

SKBの仕組み

CANにつながらない、改造が不要、設置するだけ、Getaroundで提供、
というキーワードから、SKBとは既存のリモートキーレスエントリーと同じRF通信方式で鍵の開閉・エンジン始動を行う仕組みではないだろうか。ゆえにSKBが使えるのはトヨタ車だけのはず。

メーカーオプションのカーシェア機能

SKBの一番の肝は個人間カーシェアが手軽にできることに尽きると思う。
言い方を変えれば、トヨタはカーナビやADASと同じくメーカーオプションの一種として、SKBというカーシェア機能をリリースした、ということ。

P2PでなくB2C、たとえば日本のタイムズカープラスのように企業が提供するカーシェアの場合、鍵の持ち逃げはそんなに重要な問題ではないはず。
一方、P2PカーシェアのGetaroundでは鍵の受け渡し方法は所有者に一任されている。アナログな手渡しも可能だし、タイムズカーシェア同様にスマホが鍵代わりになるGetaround Connect Keyというオプション装備も販売している。
カーシェアの利用者の立場ではGetaround Connect KeyでもSKBでも違いはないが、
新規にカーシェアを始めようとするオーナーにとって、設置するだけのSKBは非常に魅力的なオプションとなる。

カーシェア時代の生き残り戦略

視座をぐっと持ち上げてカーシェアが普及したときの変化をカーシェアのサプライサイド(供給側)とデマンドサイド(利用者)に分けてみる。

デマンドサイドの変化

カーシェアの利用車=ドライバーにとって自動車の選び方が変わってくる。
「コスパ」「お値打ち感」の定義が変わってくる。
車両の一括購入なら300万円くらいという予算制約があったドライバーでも、
利用する都度の支払いならレンタカー感覚で1回1万円くらい払って、
「ちょっとくらい高くても乗り心地が良い車に乗りたい」
と考えるはず。
となるといわゆる外車が相対的に強くなる。

サプライサイドの変化

カーシェアサービスの主体は企業もしくは個人。
企業の場合はレンタカーサービスと基本的に同じ。
車両の維持費などトータルコストが抑えられることが重視されるはずで、
結局は販売店やディーラーとの関係しだいで導入される自動車はばらつく。

注目すべきは個人間カーシェア。
不動産投資と同じく投資の一環としてカーシェアを捉えた場合、
導入コストと売却価格が非常に重要視される。
個人間カーシェアにおいてトヨタのSKBはキラーアプリに化けるポテンシャルがある。
Getaround Connect Keyのようにカーシェアのプラットフォーマーが提供する類似機器があったとしても導入・撤去のたびに費用がかかる。
そしてP2Pカーシェアならトヨタというブランディングが確立できれば、
トヨタの中古車価格が上昇し、売るときもトヨタなら安心だから好循環につながる。
中古スマホでiPhoneがGalaxyより値下がりしないのと似ている。

まとめ

個人間カーシェアという一見エッジィなサービスを推進するトヨタのSKBは
カーシェア時代を生き残るための戦略商品。

参考

トヨタのコネクテッド戦略は3本の矢

余談

SKBってSKE48とAKB48がごっちゃになったみたい。このあたりの略語のセンスは日本ぽくてダサかっこいい。

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